森里家の日常20

曇天の空の下、ソイツはやって来た。



「森里、いつもスマンな」
「ははは…まぁ、いいですケド」


俺の先輩達は実に器用で有能なエンジニアでもあり、
そのストイックな感性は、ある世界で賞賛に値する
ものでもあるのだが。


「まぁ!螢一さんっ、この子は?」
「いや、先輩達に頼まれちゃってね」
「可愛いですねっ、小さくて…でも?」
「ああ、屋根がないんだオープンカーって感じかなぁ」


その実、オープンカーではなくメンテナンス途中、
或いは改修中…いや、魔改造って言うべきか。
色々訳あって少しの間預かる事になった軽自動車は、
家の女神さまっにはとても好評のようだ。


あと、スクルドに妙な事をさせないよう気を付けないと
ダメだな。



その後、なんとなくだけどドライブしようと言う事に
なった。
取り合えず公道を走れるくらいには保安部品も装着して
あるし、ナンバーある。大丈夫だろう。


「う〜む」
「どうしたんですか?」
「いや、とても快適に走れてる」


うん、実に快適に走れる。エンジンも良好だし足回りも
しっかりしている。さすが先輩達だ。
ただ、軽自動車なのにやたら馬力があるような気がする。
うん、気にしないでおこう。


オープンカーなら海岸線ですよね。と言う訳で海沿いを
走ろうとすべく車を走らせた。
途中、運河を渡るための橋にさしかかる。


「螺旋状に道路が…まるで天界への行程のよう…」
「ははは…」
うん、事故って召される…って意味じゃないよね。
左回りに回転するように上昇する道を上がると、
地上にはない風の匂いがした。


ロードノイズと排気音に混じって彼女の鼻歌が響く。
雑音の中でもくっきりと聞こえる声は喜びに溢れて
いるような気がするのは身内贔屓かもな。


空は相変わらず曇天模様。こればかりは女神さまっの
法術でも何とも出来ない。
しかし途中で雨でも降ってきたら大変だ。
改修途中の車には幌も付いてないし。
そう言えば年がら年中雨降りな国イギリスでは雨が
降るとオープンカーでも傘をさすらしい。
あの黒い大きなこうもり傘だ。


とか何とか思っている間に、海岸線少し走って
無事に家に到着した。


「あ、お醤油買うの忘れてました」



そんなある日の森里家の日常でした。


by belldan Goddess LIfe.


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ご無沙汰しておりました。
なんとか生きてます。
コメントありがとうございました。