とても大切な日
福沢祐巳は、迷っていた。
来年になって、春が来れば大好きなお姉さまは卒業してしまう事を。
何にも言えずに、冬休みに入ってしまう…
「でも何を…」
何を伝えたいのか?それすらも分からなくなるほど混乱している自分に
ますます混乱すると言う事態になっているのだった。
そんな不安なクリスマス・イブの前日、彼女はペアのチャームを買った。
初めて会った時の事…そして学園祭の夜、ロザリオを受け取って…
面影を追想する。だから…
だから、受け取ったロザリオに良く似たチャームを買ったのだ。
「お揃い…だもん」
それは離れていても、お互いが感じあう通信機のようなもの
それは言葉にできない気持ちを、確実に届けてくれるもの。
小さなケースに入った、銀色の小さなクロスはキラリと光るのだった。
相変わらず忙しい…
小笠原祥子は、ため息をつくのだった。
「ふぅ…」
でも、どうしているのかしら?祐巳…
小笠原家恒例の年末行事には、おじいさま、お父さまの立ってのお願いで
最優先事項になっているから…出席しない訳には…
「今年は、祐巳さんも誘ってらして♪」
お母さまは簡単に言うけど、突然こんな社交会的集まりには、と懸念する。
もちろん祐巳の事だから、きっと大丈夫だと思うのだけど…
わたくしがイヤなだけなの…
だって、ふたりきりで会いたいのだから。
「会いたいわ・・・」
「会いたいなぁ〜」
思わず考えている事が、声に出る祐巳だった。
「誰に会いたいって?!ああ〜祥子さんか!」
相変わらずの姉の反応に、苦笑いで部屋に入ってくるのは、弟の祐麒だ。
「もぅ〜!ちゃんとノックしてよね!」
「ノックはしたよ…全然気が付かないじゃん!」
相変わらずの姉の反応…それは思ってる事が簡単に声に出る…
サトラレか?とか想像しながら笑った。
「ちょ、ちょっと!笑うの?なんでよっ!」
こっちはマジで生きるか死ぬかって感じで悩んでるんだからっ!
祐巳のふくれっ面を見て、ますます笑ってしまうが
「い、いやゴメン…そうじゃなくて、あのさ・・・」
そんなに気になるのだったら、電話すりゃ良いのに。と彼は思う。
そんな事できるもんですかっ!と声を大にして言いたい…言いたいけど
「うん…そうだよね…分かってるもん…」
思わず、ふぅ〜とため息が出ちゃう祐巳だった。
「ちょっと〜!祐麒!お電話よ〜柏木さんから♪」
下のリビングから母の大声が…それを聞いて
「あちゃ〜まったく…何の用だよ…」
ポリポリと頭をかいてリビングに下りていく祐麒は
「何なら、オレが電話しようか?」
「ダメっ!絶対ダメよ!」
口をムッとして一文字、本当に祐巳って面白い…そう思った。
すみません…話が長すぎ(爆)続きは24日って事で^^;