2010-10-01から1ヶ月間の記事一覧

ある日の出来事 5.

ちょっと驚いた顔をして、それからまた優しい笑顔に戻って。 マリアベルは一目散に螢一の元へと駆け出して行く。それは、 まるで引力に引かれるようにして。 「おいで」 螢一はそう言うと、両手を広げてマリアベルを優しく抱擁した。 何も聞かないのかな?と…

ある日の出来事 4.

見上げた空には、鳶がくるりと輪を描いていた。 「鳥さん・・・?」 何だろうと思って傍にいる筈の猫の方を見ると、そこにはすでに 猫の姿は無かった。 「あれ?」 不思議に思うマリアベルは周囲を見渡したのだが、姿は無い。 何だかバカみたい、あたしって・・・ …

ある日の出来事 3.

思わず飛び出した先は、縁側のある裏庭だった。 ここはいつも季節の彩りを際立たせ、その自然の恵みはとても心地良く 風に運ばれる遠い世界の香りは新鮮で、それでいて懐かしくもあって ホッと心和ませる空間なのである。 縁側から望む眼前には小さな池があ…

ある日の出来事 2.

みんなのティールームで待っていたママは、少し悲しそうだった。 それからあたしの顔を見詰めて「はぁ・・・」と溜息を付いた。 「そこに座りなさい、マリアベル」 ママはそう言うと、ちゃぶ台の向かい側を指差した。 ママと差し向かいになる。こう言う時は決ま…

ある日の出来事 1.

マリアベルがまだ小さい頃、お使いを頼まれての帰り道で ある事件が起こったのを思い起こしていた。 駅前にはたくさんの自転車が放置してあって、駅に向かう人々が 足をとられてしまう。そこにある男性が、さらに一台の自転車を 停めた時の事だ。 強引に停め…

君の笑顔

不思議な笑顔だよね。 大学の試験が上手く行かなかった時とか、レポートの提出が 大いに遅れてしまった時とか、それから…得意のバイクでコケて しまった時とか、なんだろう、その時の君の笑顔はどうしてそんなに 優しいのだろうと思う。 上手く行った時の喜…

秋雨

「こりゃ参ったわねぇ…」 突然の雨に足を止められたウルドは、猫実商店街のアーケードへと 雨宿りに向かった。買い物帰りの途中のご婦人とか、お遊戯してた 子供達、仕事の途中なのだろうかサラリーマンが商店街の軒先へと 集まって空を眺めていた。曇天の空…

マリアベルの母の話

マリアベルと楽しい仲間達・・・と言う訳でもない。 現在(どんな現在だ?)中学二年のマリアベルとカレンは、 学校の人気者・・・だと思いたい。 可愛いけど怒ると怖くて、恋人にしたくないナンバーワンとして 君臨しているのだが、それはそれ、これはこれ。 カレン…

神無月

束の間の秋空に陽気が充満して行くのを感じた午後は ちょっと懐かしい想い出に浸ってみるのも悪くはない。 瞳を閉じて思い返していると、そこにはいつもあなたが いるので、きっと私、笑っている。 過去も、現在も、そして未来も… 「うふふ…」 母屋の縁側で…