2010-11-01から1ヶ月間の記事一覧

ある日の出来事 9.

境内に落ちている枯葉達がくるりと弧を描きながら舞い上がると、 その中に見目麗しい女神さまっが降臨して来るのだった。 その、重力を感じさせない姿は、どこか、この世界から切り離された 存在だと思い知るに至るまで、そう時間はかからない。 小さな女の…

ある日の出来事 8.

バイクは山坂道を降りて行く。幾度かの曲り道、そして所々にある アップダウンにさしかかると、バイクは地面を跳ねて宙に浮かぶ。 その浮遊感が好きだ。 まるで重力を感じさせない一瞬に、どうしてだか心が躍る。 コーナーを旋回し、緩めていたスロットルを…

ある日の出来事 7.

「秋の野に 咲きたる花を 指折り かき数ふれば 七種の花」 小さな花達が可憐に風に揺れていて、その傍にはススキの群生が ゆらゆらと幻想的に周囲を囲んでいるように見えた。 きょとんとしているマリアベルの頭を撫でながら、螢一は言葉を綴る。 「女郎花、…

ある日の出来事 6.

何時もとは違うルート、山へと向かった螢一とマリアベルは 秋の透き通る空気の中で、頂上を目指すのだった。 山を覆う木々は、所々紅葉を帯びて色合いを変えていて、何か馥郁たる 香りを醸し出しているように思えた。 山肌の沿って、或いは小さな平地には鮮…