季節のよって変わる色達

加東さんは面白い、それが私の感想だ。

時々って言うか、かなり頻繁に下宿先へ転がり込んでは

バカ話したり、黙ってもくもくと本を読んだり

借りてきた映画を、鑑賞したりして時間が過ぎて行く。

「ねぇ 加東さん…」

と、言い出して止めた。

「はいはい、勝手にどうそ、お茶でも何でも」

そう言って加東さんは、こっちも見ないで言う。

「ふ〜ん、了解…」

私もツレナイ返事だ。

どうして何も言わないのだろう?

大学で会っても、ここでこうして会っても何も言わないのね。



時々想い出したかのように、昔の事を考える

心にチクリと刺したような感触…

でも、それはすでに探さないと見つからない所ある。

このまま忘れちゃうのかな?人間は忘れる生き物だって言うからね。

妹の志摩子の事を考えてみる。

私は別に、面影を映すような事はしない

志摩子は、志摩子だ…それが私の誇りだ。

こうしてほら、私はちゃんと生きている。そして何より大切な人の存在が

こんなに誇れるものだと、そう信じているから。


いつか誰かに、ちゃんと話しを聞いてもらおうと思う。

笑って、そしてあなたに会えた事が、最大の幸福だったって事を


同じ空の下にいるんだよ。

同じ気持ちを共有できたんだよ。

そして今でも、心の中にあるあなたの面影が

私を、ほらこんなに優しく、自由にしてくれるから。



「佐藤さん?どしたの?静かねぇ…」

そう言って、加東さんは笑うのだった。



 読みかけの本にしおりをいれて…。