ブレイク・ファースト

belldan2005-07-05

モーニング・グローリー...


 他力本願寺は小高い丘の上にある
 早朝ともなればあたりはまだ寝静まったままだ。

 朝日がまだ 少し眠気眼な時間 東の空に架かる前に
 ベルダンディーは起き出して 朝の支度をするのだ。

 傍らに眠る 愛しい人 起こさぬ様にそっと
 隣に敷いた布団を手際よく畳むと 音を立てず
 寝室から廊下へ出るのだった。

 淡いブルーのパジャマは 螢一の着ている物と同じ
 そのまま洗面台へ行き 冷たい水で顔を洗う

 「おはよう 今日も1日よろしくね♪」
 鏡に写る自分の笑顔に 合格点を出すと

 すぐ隣にある脱衣所に行き 着ているパジャマを脱ぎ
 朝の沐浴をするのだ。

 これは彼女のいつもの儀式
 女神の身支度でもあった。

 人が浴びるには少し冷たい水 それが禊のようで
 しかし女神たちには ごく当たり前に日常
 (一部を除いては)

 勢い良く水をかけるのではなく 湯船に浸したその水に
 しずしずとその身を浸して行く

 そして祈る。今日を。



 一連の儀式が済むと 法術で今日の気分に合う装いを作る
 晴れやかに透き通った青 それが彼女のカラー

 それから 厨(台所)に赴き 朝食の支度と彼のお弁当を作る。

 森里家の厨は とても旧式なものでガスではなく薪を使って
 火力を用いる 昨日から用意している釜に火を入れ
 もうひとつのコンロには水を入れたやかんをかける。

 「火の精霊よ 水の精霊よ…」
 今日もこうして朝の支度をできる事 それが嬉しい
 永遠と言う名の今日は 今ここにしか存在しないのだから...

 それはまるでワルツを踊るよう それはまるで優雅に泳ぐ魚のよう
 くるくると厨を手際良く有効に使う姿は コンダクターのよう

 目に見えない指揮棒を 軽やかにしなやかに振りながら
 一大シンフォニーをかなでているかのようだ。


 そろそろ東の空から 朝日がその姿を現そうとする頃
 彼女は 螢一を起こしに寝室に向かう

 そっと開けた襖 彼はまだまどろみの中にたゆたうゴンドラのようだ
 どんな海路を夢見て そして誰に出会うつもりなんだろうか

 私なら良いのに 私なら嬉しい…

 夢の中でも私の事 思ってくれてますか? なんて…
 ちょっとワガママかしら? でも…でも…

 「螢一さん…」
 そっと呼びかけてみる でも彼はまだまどろみの海の中

 「螢一さんっ」
 今度は少しだけ強めに呼びかける 寝返りを打つ彼

 「螢一さんっ♪おはようございます♪」

 寝ぼけ眼の彼が こっちをむいた!
 すぐさま駆け寄ってしまう・・・だって・・・

 「んん…?」
 寝起きの彼は ちょっと大胆なのだから♪