郷愁

それが自分の使命だとしても...
  



「ふぅ、今日はここで終わりにしましょう」
最後の点検箇所をチェックし終わるとベルダンディー
後ろで待機しているすクルドの方を見た。

「おねえさま、ご苦労様ですぅ〜」
満面の笑顔で姉の労を労うスクルド

「ご苦労様〜さぁてっと!」
姉のウルドは、う〜んとのびをし、首をコキコキならす


ユグドラシルの定期点検 いわゆるメンテナンスは
システム上完璧だとは言え、それでも情報伝達の際に発生する
タイムラグ等で生じる「バグ」の除去が主な仕事なのである。


ウルド姉さん曰く「風通しを良くするためよ」だそうだが
本来なら、時の守護神ノルン三姉妹…いや三女神達が
世界の中心とも言える、天上界に存在しておらず、局地である
地上界にその居をかまえる事も深刻な問題なのだが...


ある意味、地上界それも森里家が中心になりつつある昨今なのであった。
それもそのはず、異世界に通じる門であるゲートまでもがここに存在し
異世界を旅する者にとっても、重要な地点でもあった。


チェックはすべて完了した…あとは…

「じゃあ、サブコントローラーに管理を移して、メインの再起動に移るわね」
ウルド姉さんは、心持ち慎重な表情でふたりに言うと
「サポートよろしく!」

一瞬とは言え、メインからサブにその権利を預けるのは危険が伴う
ベルダンディースクルドは、コントロール室の空間を完全にシャットアウトして
結界を作る。

一部の隙も許されないのだ。この切り替えに要するわずか1〜2秒に
何かが、誰かが介在するだけでシステムは混乱する。

これが時の守護神ノルン達の最大の仕事なのだ。



「管理者は辛いわねぇ」とはウルド姉さんの言葉
一番下の妹スクルドには、まだ一人では荷が重い仕事だが
それでも彼女は、憧れのお姉さまみたいになりたいと願う

それも彼女の宿命、そして使命であった。



「よしっ!成功!今回も上手く行ったわぁ♪さすがあたしよねっ!」
先ほどまでの緊張感もどこ吹く風か、目を細めるウルド姉さん

 
「姉さん、お疲れ様です♪」
それでも結界を維持したまま ベルダンディーは気を緩めない

あと5秒……3秒…2秒…1秒… …

ベルダンディーの手が降りた
スクルド、ご苦労様、終わったわよ♪」

「ふぅ〜疲れたぁ〜」
スクルドは集中力を解き、後ろにあるチェアーに腰掛けた。


「ふふふっ♪さぁて…」
さて、地上時間にして48時間後…再起動後の最終チェックがあるから
それまで久々に女神モールで楽しみましょう♪とウルド姉さん

実は、ウルドもスクルドもこれが楽しみだったりする。
もちろんベルダンディーも、懐かしい友人たちに会えるのが嬉しいのだが...




地上界を映すモニターがある。
そこには、いつも他力本願寺が映し出されていた…


  サウタージ 郷愁は いつも遠くにありて想うもの

「早く 会いたい」
両手を胸に合わせ、静かに祈る


  想いは風に乗せて 届けましょう 愛しいあなたに


黄金色に光るオーラがベルダンディーを包む。




その頃、森里家の縁側では…



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