ああっ自転車に乗って

ベルダンディーが買い物に使用していた自転車の
老朽化が進んでいる…
それは以前、中古で買った物だが、その割りには
しっかりしたフレームと、細部にわたってパーツが
俺的にも納得いく代物だったので購入した訳だが…



「螢一さんっ 何だかこの子の調子が…」
そう言ってベルダンディーが、自転車を押して
坂道を登って来るのを最初に見たのはスクルド
スクルドは、何時もの様に彼女の帰りを正門で
待っていた訳で、心配そうな顔をして自転車を労りながら
坂道をあがって来る姉を、これまた心配気に見たのだった。


スクルドのメカニック・スキルを持ってすれば、問題は解決の
一途を辿るだろう…そう思うのも無理はないが
如何せん、自転車の心臓でもあるクランクが駄目になっている
「新しい部品に交換すれば…」
スクルドは思うのだが、何事も全体のバランスを考えると
そうは行かないのが現実だった。


螢一もそれを見て
「あ〜こりゃ寿命だなぁ…」と落胆する
それにしても、あと少し負荷をかければ
どうなっていたのか分からない…そんな状態なのに
ベルダンディーの天性の機転なのか、或いは自転車の悲痛な声を
聞いたのか…それはどうか知らないが、とにかく事無きを得て
ホッとした螢一だった。


使える物は、最後まで使う…何も無駄にはしたくない
それは森里家の家訓なのかどうかは知らないが、螢一は
そうやって古い物でも大切に使用する
しかし物にも寿命があり、そして天寿を全うする物が
そんなに多くない世の中だと知っていた。


「螢一さんっ…この子は、もう…」
そう言って、今まで自身の一部のように可愛がっていた
自転車のサドルをなでる女神さまっは、とても悲しげな顔を
彼に向ける
「…ベルダンディー…」
その悲しげな顔を見ると、何も言えなくなる螢一だったが
「でも、コイツはちゃんと仕事して、そして終えたんだよ!」
「螢一さんっ」
「だから…だから、そんな悲しそうな顔をしないで…」
今までありがとうって、そう思おうよ…と彼女を優しく見詰めた
「はいっ螢一さんっ…そうですよね!」
彼の優しい励ましの言葉が、胸に響く
私…あなたのそばにいて本当に良かったと、心から思えるのだった


今まで使っていたその自転車は、一旦納屋に置いた
その後、使える部品を外した
さて、ここからが問題である…早急に一台、自転車が必要に
なって来る…
安く買える店はある…しかし…
最愛の女神さまっの命を預けるに相応しい自転車となると
そうは行かなかった。


そんなある日の事であった…



 続く(ちゃんと続けるよん)


by belldan Goddess Life.