秋の風景

「月が綺麗ね」と君が言った。
その月の光を浴びて浮かび上がる君の顔
幽玄に儚く映るような、肢体のシルエット
「ねぇ、そう思わない?」
見返った姿を、何に例えれば良いのだろうか。


言葉を失った瞬間、本当の思いが込み上げて来る
夜風が頬をくすぐるように撫でて行く
君の髪が風に揺れる、風下に流れる髪の行方を
目線は追ってしまう。運命のように。


川面をなぞるように、そぞろ歩きをする夜道
水の音と、ふたりの歩く音だけが
この世界のリズムのような気がした。


「とても綺麗だね」
遅れて言った言葉は、先に言った君への
答えにはなっていない。
それは遥か彼方から来る、星の瞬きのように
時間を時空を越えて、辿り着いた思いのようだ。


このまま夜の散歩道、このまま世界の果てまで...。


秋の風景 by belldan Goddess Life.


*** *** *** ***


  秋の想い出



長く伸びる影を追いかけて、どこまでも駆けて行った
日が暮れて、いつもより大きく見える垣根も
長くその姿を変えた電信柱も、何も怖くない。怖くない。
俺には相棒が居るからさ。とっても心強い相棒が。
手にしたリードが、これでもかと伸びて行く先には
俺の相棒の日本丸が居るから。
何も無い帰り道、あいつの居なかった帰り道は
ちょっとした音にも、何かが動く気配にも敏感になって
どうして心臓に毛が生えてないのか?って思ってしまった。
知らない事は怖い事だと、それすらも知らなかったあの頃
でも誰かが傍に居たら、何も怖くないんだと教えてくれた。
それが君だ。
俺達は色んな場所を探検して、お気に入りの道順を決めた。
あの頃の風景は、今でも変わってないんだ。
君との思い出だ。


俺より先に夜空の星になった君は、今は何している?
こんな風に時々思い出しては、懐かしんでるボクを笑うかい?
「元気だよ」って、そんな返事も無いけど、でも
きっとそう言うに決まってる。
もし俺が君に手紙を書くとすれば、どんな風に書けば
良いと思う?
犬語はさっぱり分からないから、後でベルダンディーにでも
聞いてみようかな?だなんて、俺って、ちょっとセンチメンタル?


秋の夕暮れには、君の事を思い出してしまうよ。
君がくれた優しい思いは、暖かい想い出となって
心にあるから。
近くの家の犬が吼えている。それはきっと、嬉しいから
そして君の事を、とてもとても懐かしんでる俺が居るから。


秋の想い出 by belldan Goddess Life.