音の無い世界は

音の無い世界 音の無い世界は灰色で
誰もがひどく 不機嫌で、のろのろと
時が立つのを 待っている
二度と吹くことの無い 風とか
成長を止めた 梢の憔悴感とか
そして
君は、机からペンを落としたのに 気づかない。


拠り所の無い渡り鳥たちは 途方に暮れ
水に棲む魚たちは 泳ぐのを止めた。
音の無い世界 その世界には色が無くて
すべての形さえ 曖昧になってくる
そして
君は、思考する海に埋没したまま 帰らない。


  生命の鼓動 躍動感 そしてそれは原始のリズム
  そこにはいつも、歌があるんです。
  私たち女神は、それを調律し随時更新しているだけ。

 
  彼女がそう言って笑った。
  そんなに大変な事なのに、と俺は思った。


音の無い世界 チリンと鳴る風鈴とか
コトコトと台所から聞こえる、朝餉の支度とか
小鳥たちの歌声 近所の子供達のはしゃぐ声
そして
君の、その美しい歌が聞こえない世界。


  そうなんだ、歌があるからこの世界は躍動して
  連綿と続いて来たんだよね。
  君たち女神は、それをいつも見守っていたんだ。


  彼がそう言って感嘆した。
  それを感じるあなただから、私は... 


by belldan Goddess Life.



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余談ですが「闘う翼」編の最初の場面、リンド降臨に際して
螢一がリンドの詳細を知らない事に、ペイオースが驚いて
突っ込みを入れますよね。
「そんな事も知らないのですかっ!」とかだったかな?


この時点で確定したのは、ペイオースを含め森里家に居る
女神さまっすべてが森里螢一くんを神属か、あるいは
それに近い人物だと認識していると言う事ですよね。
さり気無い演出ですが、面白い事実だと思いました。


補足として原作を確認したのですが、原作ではタイトルは
「戦う翼」となっており、アニメ版「闘う翼」とは別物だと
考えても良いかと存じます。
更にアニメ版でペイオースが螢一くんに発した台詞は
原作ではウルドとペイオースがスクルドに発している模様
ここら辺が変わると、根底の部分も変化してしまいますね。
もっとも全て原作に忠実であれ、とは言いませんが、
藤島氏の世界をアニメ化するにあたって
微細な部分の再考察が必要だと考えられます。


いずれにせよ、「闘う翼」を鑑賞して、その高いクオリティに
感激した経緯があるからなのですが、だからこそ
また原作への評価も高まったと言えます。