お向かいの女神さまっ

テストの成績も悪かった。
お友達に、ちょっとイヤな事言われた。
そして今日、お母さんに叱られた。
「バカー!お母さんなんて、大嫌いっ!」
全部あたしのせいなの?全部あたしの責任なの?
全世界の悲しみを背負った少女って、あたしの事なの?


お母さんに叱られたのは、単なるきっかけだった。
そう、冷静に考えれば、一番悪いのは多分あたしだ。
だけど、でも…でも、誰も分かってくれないんだ。
クリスマスもそうだっだし、なんて冬休みなのかしら。
「寒いっ…」
そうだった、勢いで飛び出したものだからセーター一枚
の格好では、12月の外は寒すぎる。


何か…もう、ここであたし、死ぬのかな?とか思って
本当に悲しくなってしまった。


そして、気がつけば、お向かいのお寺の境内にいた。
鐘衝堂の石の階段に座って、ぼんやりと俯いていたんだ。
寒くて、自分の腕で自分を抱きしめてみたけど
ちっとも暖かくならないの、当たり前だけど寂しいね。
「はぁ...」


その時、ザザザッと木々が動いた。風の音がした。
あたしは身構える、寒さに少しでも絶えれるようにと。
でも、違ったの。風の音と共に、歌が聴こえて来たんだ。



  微笑む風が あなたのそばにある
  見つめる瞳が 優しい眼差しをくれる
  悲しみにうつむいた昨日も
  眠れぬ夜の深淵の闇も 
  やがて消えて
  朝の日差しの中で
  新しく生まれる 
  あなたの笑顔を待ってる


  街路に咲く花の その一滴
  誰も知らない その努力の果てに
  咲き誇る笑顔の なんて美しい事でしょう


  あなたの苦労や 努力がいつか
  花の様に咲き誇る日が来ると
  信じている者がいる事を知ってほしい
  微笑む風が あなたのそばにある
  見つめる瞳が 優しい眼差しをくれる


  いつもあなたのそばに 優しい風が...



あたしは声が聴こえる方角を見る。
あたしの目には女神さまっが見える。
「あ、ベルママ〜!」
その女神さまっは、優しく微笑んであたしを見ている。
「こんにちは、梨沙ちゃん」


気がつけば、あたしはベルママの元へ駆けて行って
その胸元へとしがみついていた。
「あの、あのね…あたしね、あたし…」
あたしは嗚咽していた。
心の中にある、言いようのないモヤモヤとした感情が
防波堤を越える怒涛のような水となって、あたしの目から
流れ出していた。


暖かいんだ、こうしていると体から熱いものが湧き上がる
ベルダンディーに抱きしめられた梨沙ちゃんは、ようやく
安堵を感じた。
ベルダンディーは、何も言わずに、ただ彼女の頭を撫でて
優しく微笑んでいた。


それからベルダンディーは、梨沙ちゃんを母屋に招いて
暖かい紅茶と、焼きたてのマドレーヌを振舞った。
「美味しいっ!」
「そう、良かったわ♪」


気がつけば、あたしの心の中にある悲しみの気持ちは
霧が晴れた山のように、鮮明になっていた。
あたしはベルママにお礼を言い、家路に着く。
とても、とても不思議な、だけど、とても暖かい気持ち
になってしまう、いつもだけどね。


あたしのお家の向かいのあるお寺には、不思議な事が
たくさんあるけど、でも、いつだってあたしの事を
大切にしてくれる。嬉しい気持ちを持たせてくれる。


「ありがとうー!」
大きく手を振って、帰りましょう。
きっとすべては良くなっていると思うから。




 お向かいの女神さまっ。



by belldan Goddess Life.




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さて、2007年もあとわずかですね。
今年はどんな年だったのでしょう?たくさんの出来事があって
整理もつかないまま、年越しを迎えそうな予感もしそうです。


2008年も良い年でありますようにと、祈りたいですね。


今年、出会った方々に感謝を!そして来年も良いお年を!
ありがとうございました。