The finishing touches.

「ふ〜寒いわねぇ」
縁側から庭を眺望しながら言う台詞じゃない…
そんな格好で、ウルドはため息まじりで言った。


お正月から着ている和服が気に入ったのか、いつも
和装なのだが、やたら胸がはだけているし、足も
あらわに出ている。さらに手には扇子まで持って
胸元を扇いでいたりもする。
しかし、今は冬。寒さも絶好調な1月のある日
昨晩ちらほらと降り出した雪が、うっすらと白化粧を
庭に施していて、新鮮な風景が楽しめた。
ウルドはどっかりと縁側に腰を下ろして、頂き物の
日本酒の瓶を小脇に置き、空中に手をかざして
そこから、ぐい飲みを取り出した。
「ふふん〜マジック、マジック〜♪」
マジックじゃなくて、法術で取り出したそれは
不思議な色をして輝いていた。


美女とお酒と雪化粧の庭…それだけを想像したら
とても風情があって、趣があって良いのだが
ウルドはどうした事か、日本酒をガバガバと飲み出した。
「う〜ん、旨い!」
はだけた胸元は、さらにその領地を拡大し、胡坐に組んだ
足元は、さらに行進して行く。


ただの酔っ払いである。


庭の白梅の木にも、雪が積もり、静かな時間の中で
待ち焦がれる季節の到来を、待っているのだろうか。
「If winter comes,can spring be far behind ?」
それともウルドは、かつての恋人の事を考えていたのだろうか。
静寂な時は、その時間を過去にも未来にも思い馳せる事が
出来ると言う。
この豊饒な過去を司る女神さまっの思いは何処へ…。


一陣の風が舞った。


「寒っ…」
やっぱり寒いのである。当たり前だが…。
はだけた胸元を元に戻し、胡坐座りをして飛び出してた足を
手で摩る。
それから飽きたのか、ウルドは部屋に戻って行く。
「It lacks the finishing touches...」
そう言い残して。


The finishing touches.



by belldan Goddess Life.