春を探しに

梅の花の季節から、そろそろ桃の季節
公園沿いの小道を、散策しているふたりの姿。


「春を探しに行きませんか?」
寒暖が酷かった昨今、本当に春は来るのか?とか
ブツブツとぼやいていた矢先の事、彼女の素敵な
提案に乗る事にした。
休みの日の公園は、たくさんの子供たちで賑わい
子供連れの大人たちは、しばしの憩いを堪能していた。


吹く風は、まだ少し冷たい。それでも日中の日差しは
春そのものだ。
少し鼻をぐずつかせながら、俺は彼女のかたわらで
いまだに冬のコートを羽織っていたのだが、日差しの
おかげなのか、少し汗ばんできた。
「螢一さんっ はい、これ」
彼女がバックから取り出したのは、冷たいおしぼりだ。
「ありがとう…わぁ、気持ち良いや」
額から、首筋に至るまで、汗ばんだ皮膚を冷たい感覚が
通り過ぎていく。


3人の子供たちが、俺たちの横を通り過ぎ、その間際に
「お兄ちゃん達って、恋人同士?」
と、囃し立てた。
彼女は、その姿を微笑んで見つめている。
俺は思い立って、素直に言葉を告げる。
「ああ、そうだよ 俺たちは恋人同士さ」


驚く顔、不思議そうな顔、そして喜ぶ顔
ああ、子供って、こんなに素直に思いを表情に出すんだな。
そばにいた彼女も、最初は恥ずかし気に俯いて、それから
少し躊躇して、そして、とても嬉しそうに笑った。


そうなんだ。これが生きる意味なんだ。


The meaning of my life is...she.



 春を探しに。



by belldan Goddess Life.