Life is everyday magic

俺はぼんやりと、TVを観ている。
厨からは、とても良い匂いが漂って来て
今日の夕食に胸が高鳴るのを感じた。
少し遅めの夕食、俺を待っていた彼女に感謝しなきゃ。
「螢一さんっ 支度をお願いしますねっ」
厨から声がした。それは何時もの麗しい美声だ。
横向けに寝そべっていた体を起こし、俺は答える。
「うん、分かった」
ちゃぶ台の横にある、カセットコンロを取り出して
テキパキと用意を始めた。


今夜は、お鍋だ。


コンロを用意したのは良いのだが、その他は全て厨にある。
俺は厨を覗き、彼女に声掛けた。
ベルダンディー 食器とか、どうするの?」
下拵えをしていた彼女は、彼の方に振り向くと
「ええ、私が持って行きますからっ」
と微笑んだ。


「あ、ああ…よろしく頼む」
俺はそう言って、それは何気なくだが、ふと彼女の太腿に
目が行った。
そんなに短いスカートと言う訳でもなく、ごく普通の丈の
スカートを穿いた彼女の足が、とても気になってしまった。
別に、足フェチとか、そう言うのではないと思うのだが
普段から見慣れてはいる、女神さまっの太腿だ。


見慣れていると言うのは、ちと語弊もあるが、しかし現実に
ベルダンディーの実姉のウルドなんぞ、見えるとか、見せる
とか言ったレベルじゃない。
丸見え?そうじゃない、チラリズム?いや、そんな可愛い
レベルでもない。


で、なんで俺はウルドの事を語っているのだ?と自問する。
苦笑いしか出て来ない。
「はぁ...」
俺は踵を返し、みんなのティールームへ戻った。


ちゃぶ台の前に、胡坐座りをして、再び考え出す。
それは彼女、ベルダンディーの事である。
彼女は女神さまっで、しかもすごい美女でもある。
女神=美女としても、多分、それをも凌駕する位の高位だと
思える。
最高峰、文句無しのチャンピオンだ。
多分、歴代1位、いや、この世が始まって以来、その座は
誰にも譲ってないだろう。
人類未踏の快挙、それが天上界の住人の成せる業なのか
或いは、選ばれし者のみが到達できる境地なのだろうか。



ところで…


そんな彼女が、どうして俺みたいな冴えない男の下へと
降臨して来たのだろう。
願い事、そして契約とあって、それからたくさんの出来事が
あって、今でもこうして俺の傍に居てくれる。
好きだって気持ちは、俺の方が多いかもしれないが、でも
ちゃんと思いは伝えたし、それを彼女は快く思ってくれる。


俺たちは、ちゃんとした恋人同士なんだよね。


俺は多分、他の男よりも鈍感なんだろう。
女心の機微、ましてや女神さまっの心境なんぞ伺い知れない
と感じている。
実際、良く分からない。どう接して良いのか困る時がある。
でも、彼女の幸福そうな笑顔や、楽しそうに日々を暮らす
その姿を守りたいと、心から思っている。


Life is everyday magic.


人生は、毎日が奇跡なんだ。
彼女と出会った事も、始まった生活も全て。
いつか、俺たちの生活の終わりの時が来ても、それも人生。
それも奇跡のひとつなんだよな。
その時まで、俺は彼女を守り続けるよ。


その時まで?


その後は?


色々思案していた最中に、彼女が厨から顔を出した。
「お待たせしましたっ 出来ましたよっ」
両手に鍋つかみをして、ホコホコと湯気が立った土鍋を
持ってベルダンディーはやって来た。
カセットコンロの上に土鍋を置き、火の調節をしながら
ベルダンディーは、螢一を見詰め、そっとつぶやく。
「螢一さんっ ありがとうございますっ」


俺は不思議な顔をしていたようだ。


彼女はそれを見て、嬉しそうに微笑んだ。



Life is everyday magic.


by belldan Goddess Life.


*** *** *** ***

愛を、そして全てを分かち合えるふたりに 幸あれ。