なぞの転校生

「じゃあ、これでサヨナラね…意外と楽しかったわぁ」
「そ、そんな…ウルドさんっ!」
じゃあねバイバイと手をヒラヒラさせながら男に背を向け歩き出す。
その後姿は、まさに絢爛豪華、白と黒の羽が宙を舞う。
後ろ髪を引かせる…まさに天性の美貌と魅力を持った女神さまっだ。


恋を始めるのも終わらせるのもあたしの仕事…


「フッ…」
苦笑混じりのハスキーな声が、甘ったるい恋の世界を一新させた。
カツコツとヒールの音も高らかに、その場を立ち去るウルドであった。


夜明け前の都会は、薄紫の空が今迄の深遠の夜を割って、やがて
朝日の出番を待っているようだ。
見上げる空は、高層ビルに切り取られて窮屈そうで、息が苦しくなる。
「よっと!」
その身体を軽々と宙に浮かせ、ふわりと高層ビルの天辺まで飛翔して
眼下に広がる世界の、その始まりを見ようと思った。


やがて東の空に輝くものがその姿を現す。
掌で庇を作り、凝視する。
薄紫から橙色と光は変化し、その光の道筋は拡大されて行く。
「うん、今日も良い天気だわねっ」
静寂した空気から、喧騒が生まれ、やがて朝の仕事が始まって行く。
「さてと…そろそろ帰るとしましょう」
歴史は、夜に作られて来た。それが真実であるけれど。
あたしの恋は…あたしの思いは…



帰り道、いつもの公園沿いを散歩がてら歩いていた。
ふと見ると、見慣れた少年が公園にいた。
「あれは…マリアベルの友達…だったよね?」
その少年は誰かを待っていた様だった。
臆せず少年の元へと歩いて行く。 声を掛ける「おはようー」
「へっ? あっ! たしか…ウルドさん?」
「そうよぅ〜ウルド姉さんよー」
「あ、あの…おはようございます...」
「ん、おはよー で、何してるの?」
「あ、ちょっと友達と約束してて…」
「そ」
「あぅ…(何てセクシーな格好してるんだよ〜)」
「で、それはナニ?」
少年が手にしていた物を指差したウルドであった。


「あ、これは友達に貸すゲームなんですよ」
「へぇ…ゲームねぇ...」
「あのあの…ウルドさんには面白くないゲームだと…」
「まぁね…でも、ちょっと興味わいてきたかも?」
「えっ?」
「貸して?」
「ほぇ?」
「いいでしょ?」
「あの…友達に貸す約束が…」
「ふぅん…じゃあ、これで優先順位を変えてくれるかしら?」
そう言うとウルドは、少年の唇に軽くキスをした。
「・・・・っ!」
「うふん…もう既成事実だわよねっ! じゃあ借りるわよ〜」
そう言うとウルドは、少年からゲームの入った袋を取り
一瞬にして目の前から消えた。瞬間移動ってやつだ。


半場放心状態だった少年は、ウルドが立ち去った数秒後に気が付く。
「まさか…夢…? あ、あれぇ?」
手にしていたゲームが無い事に気が付く。
ちょうどその時、彼の友達が登場した。
「ゴメンゴメン…遅くなっちゃった。 あれ?どうしたの?」
何だか放心状態の友達を気使って
「お、おぃ!小野寺っ!どうしたんだよー!」


 なぞの転校生 (抜粋の 9)


by belldan Goddess Life.


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なんでもねーよ。