当てているの

「ふぅ〜」と溜息と付く。
資料にと探していた自室で、てんわやんわの捜索隊である自分は
何とか目的の物を発見し、安堵の溜息を付いた言う訳だ。
古いバイク雑誌は、埃の臭いがして、ちょっと懐かしさも感じるのだが
如何せんセピア色をしている記事とか写真とか、見れた物では無い。
「こんなんで資料としてイケルのかなぁ」と訝るのだが、指定された
年代の代物はこれしか無かった。


思うに千尋さんは、古い物が好きなのだろうか?


普段は何やら可愛い物を見付けては「わーい!」とか言ってはしゃいで
ベルダンディーと共に楽しんでいるのだが、良く解らないや。
それにしても、可愛い物か…それは女子の楽しみってものなんだろうか
いやまてよ、その可愛いにしたって、何らかの規定があるのではないか
いやいや、そんな事より直感で感じるのだろうか、あるいは
『考えるな、感じるんだ』とか言った、武術の達人の域に達した者が
知る世界なのだろうか、とそんな事をツラツラと考えていた所で
背中に柔らかな丸い物の感触を感じ取った。
「…っな!」


「け・い・い・ち・さんっ! 何しているんですか?」
その軽やかで艶やかな声の主は、もちろんベルダンディーである。
彼女は螢一の部屋をノックしたのだが、中から返事がないので
そっと襖を開けた所、後ろ向きで胡坐座りをしている螢一を見た。
ちょっと茶目っ気を出そうとして、そうっと近づき声を掛けたと言う
次第であった。


当たっている…それは見事に当たっていると螢一は思う訳だ。


無防備な背後からイキナリ…無論抵抗する気も無いのだが、この状況下
で何が起るのか、当の本人も分らない。
「あああ…べべべべ、べるだんでぃー?!」
そう言うのがやっとの状況だった。
「はいっ ベルダンディーですよー! 螢一さんっ」
声が物凄く弾んでいる。とても上機嫌のようだ。
しかもその声が、螢一の耳元で軽やかに響いている。
かなり近い、と言うか、すでに密着している状況なのだが、もしこれが
何らかの戦闘だとしたら、俺の魂(生命)は、風前の灯だな、と
螢一は思うのだった。


しかし、何の戦闘だよ?


いやまて、恋愛ってのは一種の戦闘のようなものだと何かの雑誌で
読んだような気がする。
更に、恋愛とは『ふたりで愚かになる事だ』と昔の偉人が言ってたと
思う。


戦闘で、愚か…まさに、この状況を言い得ていると思った。



一方、ベルダンディーの方は螢一のオーラを見て、頬を染めた。
螢一さんっのオーラ…まるで今日の私の色と同じなのね、と彼女は
喜んだ。
淡いペールトーンのピンク色は、とても優しい色彩で彼女の思いと
重なる様に在った。
ベルダンディーの螢一への思いが、ここでブーストされるのだ。
好き好き大好き!螢一さんっ!と思いは募るばかりで、もはや誰にも
止められるものではない。
もっとも、誰が止めようと、無理なのだが。


そっと開けた襖から、螢一の後姿を見た時、胸がキュンと鳴った。
可愛い…何かを一生懸命している姿って、とてもステキです。
居ても立っても堪らず、思わず駆け寄りガバッと抱きしめてしまった。


そう、彼女は満面の笑みで、当てていたのである。


しかも悪い事に、本人にその自覚は皆無であったと言う事だ。
可愛いから抱きしめた。多分それが事の真実だとは思うのだが
相手である螢一には堪ったものではない。
煩悩を持て余す、とは良く言ったもので、まさに今がソレだ。
心頭滅却すれば、火もまた涼しい、とは言うが、自身の煩悩に付いた
火種は、決して消える事が無いだろう。


鎮めるにはどうすればいい?


真剣に螢一は悩んだ。もはや机の引き出しの三番目の奥に鎮座する
その手の書物と言うか雑誌と言うか、そんな物で済まされない何かが
彼の心中を占拠していたのは言うまでもない。


もっと…もっと知りたい(触れたい)と思いは募るばかりだ。


「どーしろと?」螢一の心の叫びが炸裂する。



「ふぅ〜」と溜息を付いた。
傍らには安らかな寝息を立てている清らかなで清楚な淑女が居る。
その安らかな寝顔は、まさに幸福そのものといった佇まいだ。
麗しい美貌の女神を見詰めながら、螢一はもう一度溜息を付いた。



 当ててるのよ。(続く…ウソ)


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*** *** ***


Hなのはイケナイと思います。



*** *** ***


五月たけなわですね〜暑かったり寒かったりしますが、
だが、それがいいっ!
そんな訳で…


「うわーん!寒いよー!」
ルナは薄着したおかげで、ブルブル震えながらの登校となった。
「仕方ないわねぇ…はい、コレ」
リナがそっと差し出したのは、いわゆる使い捨てカイロ。
「うわーい!暖かいよぉー!」
満面の笑みで喜ぶリナであった。


次の日。
「うわーん!暑いよー!」
昨日の寒さに堪えたのか、少し厚着をしての登校となったルナだった。
「仕方ないわねぇ…はい、コレ」
リナがそっと差し出したのは、いわゆる冷えパッチン。
「うわーい!冷たいよぉー!」
満面の笑みで…


「ところでさ、どうしてリナはこんなに用意が良いの?」
「あら、それって普通だと思うのだけど…」
「だとすれば…アタシが不用意すぎるのかなぁ?」
「そう言う意味ではないと思うよ?」
「そうかなぁ?」
「そうよ」
そう言うものなのかなぁ、とルナは思う。


不思議そうな顔しちゃって…ふふふっ 可愛いわねぇ、とリナは
ほくそ笑むのだった。


それを斜め後ろの電信柱から監視(覗き見)していたリクヲくんは
出番はおろか、何か先を越されたような気がして地団太を踏んだ。
「くっ…このまま、出番は無いのか?!」
この話を書いたヤツめ!と呪いの言葉を吐く。
しかしこれって、単なるストーカーじゃないのか?
有り得ない?有り得なくない?と自問をしていたら、二人の姿を
見失ってしまったリクオくんだった。


ルナリナ+。(抜粋)


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