五月晴れ

「ツイてないなぁ」
久々に出掛けた街並みで、そぞろ降る雨に足を取られてしまって
軒先で立ち往生している俺は、低く垂れ込める空を見上げて
溜息を漏らした。
春から夏へと季節は巡って行くのだが、今はまだその中間地点で
これからの事を思う。果てし無く長い道程のような時の中で。
そして5月と言うのに、この雨は身を凍えさすには十分な措置と
言う事になる。


今日は薄着だ。最近の天候を鑑みて、半袖に腕を通したのは良いが
「少し先取りし過ぎたかなぁ」と、これまたグチっぽく呟いた。
当然傘の準備も怠っているし、ポケットの中にある携帯も充電切れ
なので、ピクリともしない。
そうこうしている内に、雨足が急に賑やかになって来た。
軒先のテントにあたる雨音が激しいノイズに変わり、それと代わり
街のノイズが縮小されていくのは面白いと思う。


ザーザー ザーザー


「本当に止むのかな?」
いつ果てるとも知れない雨足に、そんな弱音も出てくる。
今日実行しようとしていた事とか、予定が全滅になるかも?と
自分自身の事なのに、まるで第三者を傍観するような感じで思う
自分が面白いかも、ああ、違うか、切ないのかも…


「切ないよなぁ 実際…」
そうなのだ、マジで切ない。と言うのは、今年高校1年になって
それは良いのだが、そろそろガールフレンドでも、と考えてはいる
のだが、どうにもこうにも…
例の行事、そう二月のアレにしたって、何も貰っていない。
何も…と言うとウソになるのだが、だが、それが母親だとか姉から
なんだもの、無いに等しいとは思わないか?
そんな自問自答を繰り返し、ふと時計を見ると1時間弱が過ぎて
我ながらアホらしいと自嘲した。


雨音は何時の間にか、柔らかな旋律を奏でていて、そして小さな
微粒となり、やがてその姿をかき消して行く。
空を見た。
低い雲の切れ間から、光の帯が差し込んでいるのが見える。
天使のはしご…誰だっけ、そんな事を言っていたよな。


「天使かぁ…」
そう言えば、あの娘達って、そんな感じだよな。


やがて雨雲は風に押され流されて行き、青い空が顔を覗かせる。
五月晴れ、と言うにはどうかと思うが、
でも、
それでも、
とても気持ちの良いものだよな。



五月晴れ。


by belldan Goddess Life.


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最近はこんな感じ。しかも現実はもっと厳しいの(苦笑)
負けないモン(笑)