天上界の恋人10.

天上界の恋人10.


「・・・えっ? バルド・・・って?」


一体、何を言っているんですかベルダンディーさんは、と
ペイオースは少々混乱気味だ。それにしても、そこまでして
隠す事はないですのに、と思った。
「呼んできましょう」とベルダンディーは踵を返して母屋に
向かう。残されたペイオースは腕を組み更に首をかしげた。
今更だが、この地上界に呼び出されたのは、言うまでもない
バルドの件についてなのだが、当の本人が居ないのでは、まるで
話は進まないのではないだろうか。


「呼んできたわよ、バルド〜いらっしゃーい」
縁側の方を向いて手招きをするベルダンディーだった。
廊下の隅の方から、ちょこんと顔を出す小さな男の子がいる。
とても可愛い。ペイオースの好みである。
「あら可愛い・・・って!どうしてあの子がバルドなんですのっ!」
ペイオースは憤慨しながらベルダンディーに詰め寄る。
「可愛いでしょ、でもあれがバルドなのよ」
にこやかに返答したベルダンディーだった。
もう一度バルドを呼び寄せるのだが、ベルダンディーの応答には
掛け合わない。その場所でじっとしている。
「ねぇ、ペイオース・・・あなたも呼んでみては?」


少し思案した。空を見上げてみた。あら、ほんと良いお天気。
ではなくて!本当にあの子がバルドなのかしら・・・
「うん・・・コホン バ、バルド?」
ペイオースは違和感を感じながらも、小さな男の子に向かって
声を掛けた。
ビクン、と肩を揺らしたバルドは、少し躊躇したものの、時間を
掛けて縁側の方に姿を現した。
「・・・ペ、ペイオース・・・私は・・・」
少年らしいソプラノの声が聞こえた。
「本当に・・・バルドなの? でも、どうして・・・?」
みるみるペイオースの頬が緩んで行く。
「・・・それが私にも分からないんだ・・・地上界に着たら・・・」
どうしてだか恥ずかしそうに下を向くバルドであった。


「・・・ん、もうっ!」
ペイオースの中の何かが弾けた。
いわゆるそれは母性本能と言う。
ペイオースはバルドの元へ駆け寄り、バルドを抱き締めた。
「もう大丈夫、大丈夫ですわ〜」
「ペ、ペイオース・・・」
「わたくしが守ってあげますわよっ!」


ペイオースの中の何かが弾けた結果、周囲は薔薇まみれになる。
花の香りが森里家の裏庭に充満する。
噎せ返る位だ。
「ペイオース・・・あの・・・」
ベルダンディーは黙ってて!」
「あら・・・えっ?」
「わたくしに任せてちょうだい!」
「・・・ペイオース」


人の家の裏庭で、何やってんだか・・・


by belldan Goddess Life.


*** *** ***


急展開?そうでもないかー。