秋雨

「こりゃ参ったわねぇ…」


突然の雨に足を止められたウルドは、猫実商店街のアーケードへと
雨宿りに向かった。買い物帰りの途中のご婦人とか、お遊戯してた
子供達、仕事の途中なのだろうかサラリーマンが商店街の軒先へと
集まって空を眺めていた。曇天の空は低く垂れ込めていて、そのまま
世界は呑み込まれて行くかのようだ。
こまったわねぇ、と呟くご婦人、面白がっている子供達、世話しなく
携帯電話を取り出して、どこかへ連絡しようとしている男性とか、
見ているとちょっと楽しいかも、とウルドは思う。


雨がさらにその勢いを増して来た時、遠くから黄色い声がして来た。
多分、学校帰りの女子学生の集団だろう。かなり雨に当たったらしく
彼女達の制服はずぶ濡れで下着のラインもあらわだった。


ちょうどその折、商店街のビルとビルの間から、一匹の猫がこちらに
向かって歩いて来た。よく見るとその猫、ずいぶんと濡れている。
女子学生のひとりがそれに気がついて、鞄の中からタオルをひとつ
取り出して、猫を呼び寄せた。「おいでオイデ〜」と口を鳴らした。
猫はその声につられてトコトコと歩いて来た。
「捕ま〜えたっ!はい、動かないでね〜」
そう言ってその彼女、タオルで猫を包んで抱き寄せる。
「にゃん」と小さな鳴き声をあげる猫は、彼女の顔を見上げる。


「お嬢ちゃん」
買い物帰りのご婦人が、その女子学生に声を掛けると同時に、
彼女の肩に大き目のタオルを掛けた。
「さっき買ったのは、正解だったわねぇ」と優しい笑顔を向けた。


「あ、ありがとうございますぅ…」
えへへ、と照れ笑いする。



雨脚が疲れを見せたのか、だんだんと雨音が小さくなって来た。
やがて空のあちらこちら、雲の薄い所から日の光が差し込んで来た。


最初に見つけたのは、子供達だ。
「わぁ〜虹だー!」
「あら、ほんとね」
「ほぅ…」
「キレイだねー」
そんな感嘆をもらす人々を、ウルドは見ていた。


とても、とても優しい微笑で。


秋雨。


by belldan Goddess Life.


*** *** ***


「姉さん、遅いわね…」
「きっとどこかで遊んでいるんだと思うよ」