師走、春待月。

何時の間にか12月になってしまっていた。


そんな他人事の様に月日の変化を言って見た所で、時間とは常に
平等に流れて行くものだと言う事はこの際、忘れようと思った。
慌しく変わる日常であるのだけど、ここに至っては時の流れが
とても緩やかに感じられるのは、多分、時の守護神である女神が
存在しているのだからと思われる。


しかも、三人も、だ。


過去の歴史がいかほどドラマティックであったのかは、ウルドを
見れば分るような気もする。そして現在の時間がとても優美なのは
言うまでもなくベルダンディーの存在そのものに既存するのだろう。
そして、未来は、と言えば・・・。



ここは他力本願寺、そしてその横に隣接する母屋の一室で、
未来を司る女神スクルドと、その姪っ子であるマリアベルが、
スクルドの自室にある、彼女いわく「経典」とも言われる書物を
むさぼるように拝読していた時の事であった。
側にはお気に入りのアイスを置き、時々ページをめくる音、アイス
をスプーンですくって口に運ぶ音だけが許された音源だった。
「ねぇスクルド姉さま?」
読み終えた書物、とは言っても漫画雑誌だったが、マリアベル
スクルドに呼び掛けた。
「ねぇねぇ…姉さま?」
二回目の応答にも返事が返ってこない。
読み終えた雑誌の表紙を見詰めていたマリアベルは、表紙と交互に
スクルドの横顔を見詰めた。


とても真剣に読書されている…きっと未来に思いを馳せているのね、
とマリアベルは考えて、声掛けを断念した。
手持ち無沙汰になってしまった彼女は、何か面白そうな書物は無いか
と周囲を見渡してみると、スクルドの机の上に見た事の無い本が一冊
目に飛び込んで来た。
多分、読んでも良いよね、と勝手に判断したマリアベルは、すっと
立ち上がると机の前まで移動し、本を手にしようとした所で、
スクルドから「待った!」と声が掛かり、思わず手を戻した。


「あなたにはまだ早いわ」
マリアベルの方も向かずに声だけで注意勧告するスクルドだった。
「もう少し待ってて、もう読み終えるから」
そう言うと、マリアベルの方を向き、優しく微笑むのだった。


スクルド姉さまには、何もかもお見通しなのだろうか。
スクルド姉さまは、未来は構築して行くものだと言っていた。
スクルド姉さまは、未来を司る女神さまっなのだ。


あたしにもきっと未来は訪れると思う。
その時、この「経典」に描かれているものは役に立つのだろうか。


少女雑誌「どぼん」を読んで。



師走、春待月。


by belldan Goddess Life.


*** *** ***


何時の間に…(笑)