メリクリ!

それは衝撃的な写真だった。
そろそろ冬休みに入りつつある学園からの帰り道で、カレンは
マリアベルから一枚の写真を見せて貰った。
結論から言うと・・・どういうことなの? と言った所なのだが、
マリアベルは嬉々として
「だからねカレンちゃん、サンタは本当に居る訳なのよっ!」
どうだまいったか!と伝えるのだった。


その写真、言葉で説明すると・・・


マリアベルのお父さんが、サンタコスに着替え中であって、その傍に
お母さんがニコニコと佇んでいた。
誰かが激写・・・少し言葉は悪いがいわゆる盗撮である。
突然着替え中の部屋に乱入して、驚く姿を撮りたかったのだろうか。


悪戯にしては、まぁ幼稚な部類に入るよね、とカレンは推測する。
「でもどう見ても・・・これって・・・」
「すごいでしょー!」
「ええ、まぁ・・・すごいとは思うけれど・・・」
ある意味、突っ込み所満載のこの写真は、すごいのだけど。


「スリスマスの夜が楽しみだわー!」
「そうだよね」
「ねぇねぇカレンちゃんは、どんなプレゼントをお願いしたの?」
「・・・特には・・・何も」
「ダメだよー!もっとこう、バーンとお願いしなくちゃ!」
「・・・バーンと?」
「そうだよー!」


バーンとお願いするって、どんなのだろう?


そんなこんなでふたりはそれぞれに帰路に着くのだった。


「ただいま〜」
「おかえり、カレン」
元妖精姫であった、カレンの母モルガンが台所からひょっこり顔を
出して云った。
玄関で靴を脱いで、きちんと揃えて、その足で洗面所へ向かい
手を洗い喉をうがいして、きちんとそろえた前髪を指で確認した。
それから台所へ向かって、テーブルに座りながら、母に尋ねた。
「お母さん・・・サンタって・・・」
「あら?サンタの事? もちろん居るわよ」
「そうだよね・・・」
本当にそうだった。異界にはちゃんと存在していて、その姿は
母に連れられて見に行った事もある。
「ねぇお母さん・・・サンタにお願いってして良いのかな?」
「あらあら、プレゼントのおねだりなのかしら?」
「でも、サンタさんはとっても忙しいんだよね」
「そうねぇ・・・特に今日は・・・ねぇ」
家事の手を止めて、宙を見上げるように思案するモルガンだった。


本当なんだ。サンタはちゃんと実在するし、クリスマスの夜はとても
大忙しなんだ。それにサンタはたくさん居るんじゃない。
たった一人でその夜の行事をこなすなんて、不可能に近い。
だから彼は、その思いを信じる人々に送る事にした。
信じる人々のその思い、その夢を実現する為に形のない贈り物を
届け続けるのだった。


「それでも毎年、ちゃんとカレンの枕元にはプレゼントがあるわよね
それって何だと思う?」
困惑し躊躇している娘に問い掛けるように尋ねたモルガンは、
そっとカレンの頭を撫でながら
「それはあなたの事が大好きだからと思うわ」
そう言うとウインクして、家事に戻って行った。


大好きだから・・・だったらあたしもサンタが好き!
そうだ、今年はサンタさんにプレゼントしよう!
作戦を練らなきゃね、あっと、マリアベルちゃんに連絡しなきゃ!


台所に置いてある子機を手にして、早速マリアベルの所へと電話した。


メリクリ!


by belldan Goddess Life.


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次回、波乱万丈、怒涛のクリスマス本番がやって来る!かも?