2月の朝

暦の上ではすでに春・・・なのか?


「でも寒いんだよなぁ」
特に起き抜けは一段と寒さが身に凍みる。
布団の暖かさを名残惜しそうにして、螢一は起き上がると
すぐさまどてらに袖を通すのだった。
「この格好で出社ってのは、どうにも無理があるよな」
苦笑まじりで自嘲する螢一だった。
この季節、まだまだ下着類で防寒は欠かせないって事で、愛用の
パッチに手を伸ばした所、そう言えば以前ベルダンディーが猫実
商店街で買って来てくれたタイツがある事を思い出した。
「そうそう、幾らなんでもパッチじゃあオジサンだもんな」
これまた苦笑しつつ、引き出しから黒いタイツを取り出した。


「おっ、これはなかなか・・・」
まるでダンサーか、或いは体操のお兄さんのような感じだと
満更でもない螢一だったのだが・・・


「ちょっと、ケーイチ。ドライバーセット貸してー!」
ノックもせずおもむろに部屋に飛び込んで来たのはスクルドだ。
「え? ああ・・・机の上に・・・って、スクルド?」


スクルドは螢一の姿を見るなり、硬直していた。
「ケーイチ・・・あんたって・・・」



「ご近所で有名な『タイツおじさん』だったのー!!」


スクルドの絶叫とも言える言葉が森里家を震撼するのだった。


まて!何だ・・・その『タイツおじさん』ってのは!
そもそも俺はまだおじさんと呼ばれるほど歳は取ってないぞ!
それに何だかヘンタイさんのようじゃないか!



その声を聞いて、螢一の部屋に訪れたのは言うまでもない
ベルダンディーとウルドだ。


「螢一・・・さん?」
「ケーイチ・・・あんた・・・スクルドに何をしようと・・・」


まてまてまて、ちょっと待てー!!


「おねーさまっ!こんなヘンタイの所に居てはアブナイわっ!
すぐさまアタシと天上界へ帰るべきよっ!」
スクルドは哀願するようにベルダンディーに訴える。
「へぇ・・・ケーイチって、やっぱりヘンタイなんだ・・・」
ウルドはしたり顔をして螢一をしげしげと眺めている。


「螢一さんっ・・・まるでダンサーのようですっ!」
ベルダンディーはとても嬉しそうに述べた。


だろ?ベルダンディーもそう思うかい? って、違うから!
これはただの防寒用の下着なんだ!と螢一は声を大にして言いたい
所だったのだが、何となくチャンスを逃している。


さて、2月の朝から大賑わいの森里家の面々、先日の節分事件と
相まって、事の真相は如何なるものでしょうか。


2月の朝。


by belldan Goddess Life.


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単なる思い付きで・・・