2月の朝 その2

「話は聞かせてもらったぞ!」


それは2月の初め頃の、いわゆる「鬼は外ー福は内ー!」って
イベントが始まる超然の出来事だった。
猫実工大大学院の噂の二人は、どこで聞いたのか自動車部の部室へと
まるで殴り込みをかけるような出で立ちで登場した。


屈強な大男のふたりが部室の入り口に仁王立ちする姿はまさに、
ここに鬼登場!と言わんばかりであった。
そしてその姿、どこでどう入手したのか聞きたくもないが、これ全身
虎柄の御召し物を装着し、万全を期していた。



鬼・・・鬼である。


「あわわわ・・・」
受話器の向うの話し主との会話を傍受されていたかと戦慄を覚える
現自動車部の部長を務める長谷川空は、わが身に降りかかる怪異に
成すすべもなく硬直しているだけだった。
「ちょ、ちょっとー?どうしたの?空ちゃん?」
受話器から聞こえてくる千尋さんの声が虚しく響き渡った。



場所は変わって、ここは森里家のみんなのティールーム。
ウルドはいささか不機嫌だった。
「まさか今年もあたしに鬼の格好させるってわけ?」
「はははっ・・・そんな事は・・・」
「って、螢一・・・やっぱり考えていたんでしょ?」
「いやいやウルド・・・だってあんなセクシーな格好は・・・」
「そりゃ〜あたしってば天上界一のセクシー女神・・・って!」
「自分で言ってるし・・・」


「まぁまぁ姉さん・・・そんなに螢一さんを責めないで」
にこやかな笑顔でお茶を運んできたベルダンディー
「ここには鬼さんなんて居ないのだから、ね」
そう言うと螢一に向かって切ない表情をした。


何で切ない?って俺・・また何か妙な事を言ったのかな?


ウルドはふたりのやり取りを見ながら溜息をつく。
そりゃ〜自分以外の女神に「セクシーだ」とか言うからよね、と
ウルドは呟くのだった。


「螢一さんは・・・せくしーなものがお好きなんですね?」
ほら来た!とウルドは思った。
「えっ?なんで?・・・」
螢一ってば、本当にバカよねぇ・・・
「だって・・・螢一さん?私は・・・その、どうですか?」
おー!言うようになったわね、この娘も。
「ど、どうって・・・その、えっと・・・君は、その・・・きれいかな?」
おっと、ここで螢一のジャブが出たよ!
「きれい・・・嬉しい・・・でも、せくしーではないのですね?」
あっと、反撃がきたわよ。
「ええー!そんな事はないよ・・・と思うよ・・・」
ちょっとロープ際に追い込まれたかなぁ?
「螢一さんっ・・・私・・・」
それは反則ってもんよ、ベルダンディー


涙目になるベルダンディーの攻撃に、退路を絶たれた螢一だった。



2月の朝 その2


by belldan Goddess Life.


*** *** ***


はしゃぎ過ぎ・・・