Rainy Holy Night

神さまっの誕生日ってステキじゃない?


「今日はずっと雨だったよなぁ」
玄関先で濡れた靴を脱ぎながら溜息を付いた。
ちょっと雨が靴の中に染みていて靴を脱いだ瞬間、何とも言えない
異臭がするのは多分、俺のせいじゃないよな。
「…そろそろ買い替え時なのかな」
そうは言っても台所事情ってもんがある。
玄関でグダグダ言ってても仕方がないと、俺は濡れた靴下を脱ぎ
廊下を自室へと向うのだった。


それにしてもこの湿気、何とかならない物かと訝るも、これまた
現在の日本台所事情ってもんが許さない、らしい…
「節電ってなんだよ…これ以上、どこを節電すりゃあいいんだ?」
そう、毎年夏に向って今年こそはエアコンを、と考えているが、
これまた何時もの台所事情ってもんが計画を邪魔するんだ。
まぁ悪態を付いても仕方ないって事で、自室へ入り、唯一の冷房機
である扇風機をスイッチを入れた。
「あれ?」
動かない…
「壊れた…訳じゃないよね?」
そう、昨日までは正常に動いていたんだし。
まさかスクルドがブレーカーを落として…ってのは無いよな。
「電気ついてるし」


これが…節電なのか?


そう思うとドッと汗が出てくるのはどうしてなんだろう。
ともかく涼を取りたいと思い、カバンの中にある筈の扇子を
探した。
「あ、あった…って、あれ? 壊れてるし」
扇子の留め金が外れて、バラバラになっていた。


暑いんだけど。
ささやかな涼を取りたいだけなんだけど、と考えれば考える程
無性に腹が立ってくるのはどうしてなんだろう。


いやいや、ここはアレだ「心頭滅却すれば火もまた涼し」と
言うではないか。
冷静になれ。冷静になって部屋を見渡せば何かある筈と
部屋を見渡した。
部屋の隅に雑誌が積みあげられていた。
その中から手頃な物を取り出して、団扇代わりに使ってみた。
すると少しは風が起って、頬の辺りの熱気を冷ましてくれる。
「…涼しい」
とは言うものの、所詮団扇等ではないし、重量もあるしで
なかなか腕が疲れてくる。
「涼しいけど、辛い…」
これが現在の俺の心境だ。


こんな時は、どうすれば良いんだ?


「そうだ!神さまっにお祈りしてみよう!」
幸い女神さまっは家にいるんだし、彼女達…と言うか、
その中のおひとり様だけがお祈りしているのだが、
門前の小僧、習わぬお経を読み、ではないが、ここはひとつ
ベルダンディーが時折唱和している言葉を唱えてみようと
言う気になった。


「え〜ゴホン…え〜と、神さま…そのあの…」
ちょっと待て!これってすごく自己的なお願いだぞ。
そんな事をお祈りしてよいのか?


すごくダメなような気がする。


じゃあどうすれば良いんだ?って思っても良い考えなんぞ
出てくる筈も無く、仕方ないので諦める事した。
でも、そうだ!心に思い付いた言葉を口にすれば良いのかも
そんな安穏とした心持になって、少し深呼吸をする。


出てきた言葉は


「神さまっ いつもありがとうございますっ」


これって、何時もベルダンディーが言ってる言葉と同じだよね。
そう思うと、苦笑しか出てこなかった。


Rainy Holy Night.


by belldan Goddess Life.


*** *** ***


ありがとうございますっ。