薔薇園にて
1月の空 とても低くて 鉛色の雲と
二つの川を隔てて、公園がある。そこの薔薇園にはたくさんのねこがいるから
私は、とても嬉しくなる。 寒空のもと、誰かが飼っているのだろうか?
たくさんあり過ぎて、とても覚えられないな〜と思った。
「え?何?」
由乃さんは、駅前で買った”たい焼き”をパクパク食べながら
「ううん…薔薇の名前なのよ…たくさんあって覚えられないね」
赤い薔薇を見ると、ドキドキする。
「あ♪…でも違った…」
名前…名前って、ホント不思議よね…
「でもさぁ〜祐巳さん?早く食べないと冷めちゃうわよ?」
由乃さんは、紙袋を私に差し出すのだった。
「ああ...忘れてた」
テヘヘっと私は、笑いながら紙袋を受け取って
中に入っている”たい焼き”をひとつ取って…
ニャア〜♪
「あっ!ネコだぁ!」
由乃さんは、嬉しくビックリして
「祐巳さん!ネコ!ネコ!」
チッチッと口を鳴らしながら、ネコに近ずいて行くと
不思議なもので、ネコは由乃さんを怖がらない。それどころか
「ニャン♪」 と言って足元にスリスリしてくるのだった。
「すごい!由乃さん!すごい!」
黒ねこ…とても大きな瞳の…ネコ…
赤い薔薇の木の下から出てきたのよ。
ネコに好かれる由乃さん…イイナァ...
そんな事を思っていると
「祐巳さん?ちょっと来て!」
そして、ゴメンネと言いながら私の食べさしの”たい焼き”のしっぽを
ちょいとつまんで小さく千切ると、その黒ねこの元へ…
「ほらね♪こいつったら…これが目当てだったのよね」
あぐあぐと”たい焼き”のしっぽを食べる黒ねこ…
でも、ネコの気持ちも分かるんだね、由乃さんってば…
「あ!今笑ったな!」
由乃さん、私の顔を見てそう言った。
やっぱ、百面相なのかなぁ〜私って…
「ほらっ♪今、笑ったんだよ!このネコちゃん♪」
あれ?私じゃなかったのか…そんなぁ
苦笑いしながら
「由乃さんって…ネコとお話できるみたいだね♪」
ホント…ネコみたいだね…