浮遊感


途切れ途切れに聞こえる 微かな温もりと共に...



私は夢を見た時 いつも泣いていた

大事な部分だけが消去された テープが回る

再試行を繰り返す 繰り返す私の手が震えるのは

薄らいで行く記憶の彼方に いつも君の手がある事を

知っているから  「忘れないから」と呟いても

君は首を横に振るのだね。


浮遊感を感じる時 いつも笑っていた

大切な君と 手をつなぎ 歩く小道は

少しだけ霧が晴れた向こう 光の道標が見えた

隣の君の横顔 光に映えて 美しかった

「このまま 一緒に行こう」

「このまま あなたは忘れるわ」

それでも私は忘れないと言った のに。


新しい出会いがあなたを変える

新しい仲間が心を溶かしていくわ

新しい季節と新しいシャツで

あなたは変わる と。


うつむく私は 言葉を捜した 捜した先には何も無かった

突然風が吹くと 目の前に大きな川ができた

このまま 離れ離れになってしまうのか

風に吹かれて ジンジンと痺れてきた手を

優しく振り解き そして君は言うのだね

「新しいあなたと また会いたいわ」

天使に 翼に 光に 時間に 君は思うと言う

浮遊感の向こう側

その向こう側に きっと私の心も届くと言う。



時間が過ぎて行く それは約束 それは契約

「お姉さま?お姉さま?」 と誰かが私を揺り起こす

私は そのまま眠ったふりをした

「新しい君に また会いたいから」…。