庭の木

　ずっと見続けてきた　裏庭の木

　幼い頃の約束も　そのままにして

　誰にも言えず　誰も答えず　ただひとり

　若草の頃　海からの風便り

　頭を垂れる実り　眠りの時

　時代が変わっても　変わらないものがあると

　風になびく枝葉が　サヤサヤと返事する

　今日の祈り　明日への想い　色即是空と

　出会いの季節　重ねあう季節

　何かが生まれ　そして別れ行く

　わたしはここに生まれ　その全てを観て来た

　わたしの思いはすなわち　結び合う夢

　時が過ぎて　再びめぐり会えたその歌声は

　あの頃と少しも変わらない

　悪戯な旋風も　大人になれば

　ほらこんなに　風薫る

　女神はそっと　わたしに手をやり

　「ありがとう」とつぶやく

　だからわたしは　もう少し　もう少し生きたいと願う

　小鳥たちの戯れにも　目を細めながら

　そして

　ふたりの軌跡を見続けたいと。

「ああっ女神さまっ」劇場版　ワンシーンから。