風をあつめて 3
どれだけ時間が過ぎただろうか
それともほんの数秒だったのだろうか...
「初めまして お姉さま♪」
そう言って にっこり笑う 少女の姿を見たとき
ウルドは 不思議な感覚に包まれていた。
「ウルド 君の妹 ベルダンディーだよ」
男は その少女を紹介するのだった
この子が あたしのいもうとなの?...
男の手をギュッと握り締めたまま そう思う
「さあ」 と男は言う 挨拶をしなさいと
「あ あたし ウルドよ…よ よろしく...」
そう言うのが精一杯だった だって彼女は何か違う…
そして自分が とても惹かれるのを感じたのだった。
先に手を差し伸べたのは ベルダンディーだった
「お姉さま〜一緒に行きましょう♪」
「う うん!」
ひとりぼっちだった頃は こんな風に誰かに
気さくに声もかけて貰えなかった
自分が置かれている立場 それ自体が彼女にも重荷だったのか?
魔界と天界を融合する者…
そして それすらも微かな記憶の中に封印されて...
ふたりは手を取り 森へ向かって歩いて行く
振り返ると もう男の姿は見えなかった。
「私のわたしのおね〜さま♪ わたしの私のおね〜さまっ♪」
ベルダンディーは今の気持ちをそんな風にして歌にした
繋いだ手をブンブンふりながら。
この子 とってもキレイな声だ…ウルドはそう思った
何だかこっちまで嬉しくなる そんな気がした だから
「ねえねえ?それってあたしの歌? ねえ?」
ベルダンディーの顔を覗き込むようにして尋ねる
「はい♪ウルドね〜さまの歌ですよ〜♪」
そんな歌…あったのかしら?そんな事を思っていると
「だって だって!やっと会えたんだもん♪」
そう言って にっこり微笑む
ウルドはとっても嬉しくなって
「ねぇ〜!あたしも歌ってイイ?ねぇ?」
「はい♪一緒に歌いましょう♪」
ふたり 同じ歌を歌う 考えてみれば ウルドが「おね〜さま」と歌うのは
ちょっと可笑しいが...
それでも初めて歌った歌は 見事なハーモニーで
何時までも歌っていたい そんな気持ちにさせるのだった。
森をぬけた所に 天上界の街並みが見えた
緑の木々と 近代的な建物 そして何よりも眩い光の洪水を
ウルドは感じた。
「こ ここが天上界なのね...」
「ええ♪そしてあそこが私達のお家なのよ♪」
そう言ってベルダンディーは 少し先の白い瀟洒な建物を指差す
ベルダンディーにはよく似合うわね…そんな事を考えていると
「ウルド姉さま?ど〜したの?」
と首を傾けながら聞いてくる
「あの…あたしには…」
似合わないよ と言い出そうとすると
「ちゃんとウルド姉さまのお部屋もあるのよ♪とってもステキなんだから♪」
早く 早く〜と催促しながら 先に歩いていくベルダンディー
ここがあたしのお家…あたしの居場所なの?
でもそんな疑問も ベルダンディーの笑顔の前には無効だった
あたしも いつかきっと…
幼い女神さまっの胸に 小さな灯りが灯ります
「うん!今行くっ!」
そう言って駆け出したウルド
天上界の光は 七色に輝いていて それはふたりを祝福しているみたいだった。
以降続く
Illustration by 完投勝利さん Thanks a lot !