秋の夜長

belldan2005-09-17

小高い丘のある お寺の境内

まるく光る満月が 夜空を照らす

母屋にある 縁側に ふたり

夕べを済ませて 空を見上げている。

心地よい風 それはもう秋の夜風だ

軽く羽織る 緋色のカーディガンは

やがて秋化粧をする 山林のようで

挿した頬の紅が よく映る。


「お腹一杯だよ〜」
螢一は、食欲の秋とでも言うべきか
今夜は、かなりの量を食したようだ。

もっとも、いつもとても美味しい料理を
お腹一杯食べている彼なので、今日も今日とてなのだが...

「螢一さんっ♪はいっお茶♪」
ベルダンディーは、いつもとは違うお茶を淹れてくれたようだ

「あ、ありがとう! へぇ〜なんだろうな、これ?」
そう言って、さし出されたお盆から、カップを受け取ると
そっと鼻孔を近づけて、その香りを嗅ぐのだった。

「ハーブ・ティなんです。螢一さん…ちょっと食べ過ぎたから…」
たくさん食べてくれたのは嬉しいが、でもちょっぴり不安なのは
隠せないベルダンディーの表情に

「い、いや…ゴメン…心配かけちゃうね…」
でも、ホント美味しいんだから、仕方ないよねって彼は言った。

ハーブ・ティには、色々な薬草やら何やらが入っていて
全ては理解できなかったが、それでもカモミールかラベンダーかのお陰で
何だか落ち着いて来たみたいだ。

「ふぅ〜気持ち良い風だね〜」
飲み干したカップを、お盆に戻して、うぅ〜んとのびをする螢一
それから縁側に仰向けになり、空を見つめた。

「よく晴れてる…月があんなに…」
すぐそばに座っているベルダンディーの方を向きながら言った

「ええ、そうですね♪とっても綺麗です♪」
空を見上げながらベルダンディー、それから螢一の顔を見て

「こうした方が、よく見えますよ♪」
と言って、彼の頭を自分の膝に乗せる

「え?ええっ!」
思わぬ行動に、つい驚きの声を出してしまった螢一
だが、彼女の膝の柔らかさと、心地よい風と、美しい月の光…

何をどう抗えると言うのだろうか

ましてやそれが、女神さまっの膝枕なのだから...



秋の夜長 いつまでもこうしていたい

その思いは ふたりの共通する思いだった。