リンドの奇跡(あるいはミストの日記)

「ああ、これは…」
思わず忘れていた物を見つけた時のような
そんな表情をみせるのだから、ミストは
不思議そうな顔をして、リンドの顔を覗き込んだ。


麗らかな季節、と言っても天上界はいつもそうなのだが
女神モールを散策するふたりの周りには、いつもより
優しげな風が舞っているかのようだった。


ポケットから取り出したのは、とても可愛らしい
キーチャームが付いた鍵だった。

「ねぇ、リンド?これって…」
ちょっと上ずった声を出してしまったのは仕方ない事
だって、リンドがこんな可愛い物を持っているなんて!


「…うっかりしてた、実はこの鍵は...」
その鍵は、森里家の鍵だと言う、リンドは帰還する際
返すのを失念したと言った。

それはそうとして、そのキーホルダーは?
と、ミストは思うのだった。だから
「ねぇ?ど〜してひよこなの?」
と、素直に尋ねてみる。


ところが、リンドと来たらまるで聞いてない
鍵を見つめたまま固まってしまった...


「リンド、リンドったら!」
ミストの声にようやく反応するのに数秒かかった
「あ、すまない…」

なにやら色々あったのだろうな、と推測し
「ねぇ、ちょっとあそこのカフェでお茶しない?」
色々聞かせてよ、とリンドの腕をつかんでカフェに向かった。




 *** *** *** *** ***




私がそこで聞いた事は、今までの中で最高にエキサイティング
だったと言う事。 もちろんそれは盟友リンドの事だ。

地上界で見たTVの事、皆で散策した街の様子とか
そして、歌!

リンドはしきりに持ち帰ってしまった鍵の事を悩んでいたのだが
「次の休暇に返しに行けば良いと思うよ」
と、私は言った。

その言葉に、リンドは少し困った顔をしたのだが
「…それもそうだな」
今すぐに降臨する事は適わないしな、と言った後
ちょっとだけ笑ったような気がした。

もちろん気が付いてあげないようにしたけどね。

「その時は、私も行けたら良いなぁ〜」
と私が言うと、本当に困った顔をしたのだった。

私はそれを見て、笑ってしまった。
だって、本当に変わったよね、それがとても嬉しい。



リンドは時折、ポケットから例の鍵を出して
見つめている。
その時の表情が、とても愛らしいの♪

      
次の休暇が待ち遠しいのは、きっとリンドだけじゃ
ないと思うよ。


私はこれを「リンドの奇跡」と名づけたのだった。



END.




FLASHさん主宰http://kumasu.web.infoseek.co.jp/GODDES/index.html
新作「ハードミッション」からインスパイアされての後日談です(爆)

本編は、とても素晴らしいお話なので、ぜひ読んでくださいね♪
感謝を込めて...