風のファルセット

天上界 ユグドラシルを中心とした世界がある。


悠久の過去から連綿と続く世界には 多くの詩が

残されているのだった。


伝承された多くの詩は、それだけでも力を持っていて

さらにそこにメロディーを加えれば、絶大な力を発揮した。


天上界には、多くの女神たちが存在し、各々適材適所と

言ったところだろうか…それぞれの業務に始終している。


女神たちが法術を使う時、それらの詩を歌にするのだが

メロディーはとても厳密で、一音たりとも間違えられない

以前、2級神が1級神の昇級試験で、たった半音外しただけで

会場は、とんでもない事になりそうな事件もあった。


さて、法術に使われる歌だけではなく

いわゆる 楽しみの為の音楽 も存在しているのである。


すべてが法術になってしまうのでは、たまったもんではない

誰かが歌を歌う時、そこに何かが起こってしまうのは

甚だ迷惑な話だと思う。


また天上界でも、コンサートは行われる。

とは言え、賛美歌と言うか、コーラルと言うか

全てが祈りの思いを含み、全世界に流されていく

それはそれは荘厳な様相で、地上界の人が見たら

そのまま昇天しそうな勢いがありそうな気もするが

まあ、この話は置いておくとしよう...



天界一の歌声と誉れ高い 女神がいる。

ノルンの次女 ベルダンディーは、その高い声域で

風が流れ 雲を払い 青空を垣間見せるかのような

清清しさを携えた詩を歌っていたものだった。

また、彼女はとても歌に敏感で、時折聞こえてくる

地上界の歌声も、よく聞き入っていた。


「あら♪今日も聞こえてくるわ♪」

耳を欹てて、聞き入るその声の主は とても小さな女の子

ソバカス アッシュブロンドの髪が海風に踊る


優しくて 清らかな思い でもなんだかとても…

とても切ないのは何故かしら? と彼女は思う


優しくて、とても一途で、芯が強いのは

彼女の素晴らしい所だけど、ちょっと的外れな部分もある

ある事にはあるが…それが彼女なんだ。


あと…泣き虫なんだ...。


そんな彼女 女神ベルダンディーだからこそ

地上界に居る その女の子に会いたいと思う訳だ


「どうしましょう…」








 風のファルセット


永遠に吹く風よ 聞かせておくれ

大地に眠る炎 汲めども尽きぬ泉

時を旅する風よ 風よ


永遠に吹く風よ 歌っておくれ

朝に夜に 太陽に月に

夢を噤む風よ 風よ...




 by belldan Goddess Life.