ああっ梅の精霊は...

まったく、ため息も出るってもんだわよ...

 
 「ふぅ〜」
この季節にはちょっと相応しくない気温に
庭の梅の木は、すでに満開だ。
女神ウルドは、いつのも様相で酒を飲みながら
ぼんやりと庭を眺めていた。


若い頃は、一途な恋ってもんがすごく当たり前だった
わたしにもそれはあった…あったって所が、実に辛いケド
何でだろうね、初恋ってヤツには、ものすごいエネルギーが
あるもんだね…


街に出て、男アサリでもしようかしら?


でも、最近ホントつまらないんだよね〜...


自分でも分かってる、その原因はね。



何やら正門から声が聞こえる、たぶんスクルドと仙太郎だろう
「あ、ねぇねぇコレって知ってる?ねぇ、うふっ♪」
スクルドの何とも可愛らしい声だ。
まぁ、仕方ないか、大好きな男の子と一緒だもんね


「うん、知ってるよ!それは…」
うんうん、ちゃんと照れるな、初々しいってもんよね


ワイワイとふたり、楽しそうに入ってきた
当然、わたしの事は気がつかないわね、そりゃラブラブだもんね


「あ、ウルドお姉さんっ!こんにちは〜!」
それは思いも由らない所で、わたしに話しかける声。
「ウ、ウルドっ!そこにいたのっ!」
こっちはこっちで、赤ら顔での対応か...


「ハァ〜イ♪ラブラブよね〜うん、お姉さんは嬉しいよん♪」
ふたりに、にっこり笑いかけるわたしって…


ふと見た梅の花、小さな花の精霊達が歌を歌っている
そうか…春を呼び、待ち焦がれる歌なんだね
それでわたしも歌ってみたんだ、もちろんわたしの天使も
ワールド・オブ・エレガンスも一緒にね。
すべての待ち人に、その季節の到来に…


「あら?歌が聞こえますね」
ベルダンディーは、螢一君との買い物帰りに歌声を聞く
サイドカーの排気音で、何も聞こえない彼に
「ウルド姉さんだわっ!わぁ〜♪」
そして、自分も早く歌い出したいのか
「螢一さんっ、ちょっと法術使って良いですか?」


「え?え?」
螢一には成す術もなく、バイクは宙を舞い上がった
わずか1秒…いや、それ以上か、バイクは難なく森里屋敷へ到着
母屋の庭に駆け寄るベルダンディーは、とても上機嫌だ
「姉さんっ!私も歌って良いですか♪」


良いも何もウルドはすでに歌っているし、もしダメって言われても
って言うか、ダメだなんて誰がベルダンディーに言えるのだろうか


そして歌声は、きれいに重なっていく
それは女神さまっが春を喜ぶ歌声
それは奇跡が実現した時の歌声
それは...


春の到来を告げる歌声。