ああっ雪の中の女神さまっ

「あら?面白いですねっ♪」
そう言って彼女は交差点の信号機を指差した
「ん?どうしたの?」
俺は、その指差した方を見上げた。


 北国の信号機は、その土地にあったデザインをしている
都会では横向きに設置されたそれは、ここでは縦に付けられている
「どうしてですか?」
と、彼女は尋ねた
「それは雪が…」
それは雪が信号機に降り積もり、雪の重みで傾斜しかねないからで…


君と歩く故郷の街並みは、白い化粧を施して俺達を歓迎してた
何年かぶりで帰郷した…そして、いつもそばにいる君を連れて…


「君のような女神さまっに ずっとそばにいてほしいっ!」
そう願って、それは心からの願いで、そして心からの本心だった


朝早くに家を出て、まだ人気のない通りを歩く
昨夜降り積もった雪、足跡も出来てない裏通りを歩き
ふたりで足跡を付けてみる
「あ、ネコさんの足跡が先でしたね♪」
目先の小さな足跡を見つけて、嬉しそうに笑う君の声
雪の中に舞い降りた女神さまっが、そこにいた。


裏通りを抜けてすぐに、小さな出店があった
この時間ではまだ開店はしておらず、残念だったが
「また今度、ここで買い物したいですね♪」
と、彼女は笑った。たい焼き屋さんを見つけて。


色んな所を案内した、そう自分でも笑ってしまう位に
でも、嬉しかったんだ、彼女がこんなに喜んでくれるなんて
「螢一さんっ 螢一さんっ♪」
彼女が俺の手をひいて、先へ進もうとしている
「よしっ じゃあ次は…」
俺はその手を、しっかり握り返した。


俺達の時間は、同じ線上には存在しない
それでも現在(いま)ここにいる事、これも現実なんだ
俺の願いが叶えられたって事は、そういう事だと思う
俺達の望む未来に、きっと届いているはずだからね。


「べ、ベルダンディー!俺は…その…あの…」
愛してるって、どうして口に出せないんだ?
「何ですか?螢一さんっ」
きょとんとしている彼女の顔を見て、やっと言えた言葉は
「ず、ずっとそばにいてほしいんだ…」


赤面する俺の顔を見ながら、彼女は笑顔で
「はいっ♪私もですっ♪」



 雪の中の序曲 釧路にて  by belldan Goddess Life.