ああっ端午の節句

屋根より高い、鯉のぼり…


 久しぶりにジャンク屋さん回りに参加した仙太郎君
もちろんお相手は、ガールフレンドであるスクルド
「べ、別に無理して付き合ってくれなくてもっ!」
そう赤面するスクルドだが、本当はすごく嬉しい♪


「いいって、いいって!荷物持ちにもなるだろっ!」
そう言って、こちらも始終満面の笑みだ。


昨日とは打って変わって、低く垂れ下がった空…
鉛色の雲達は、一触即発で雨を降らせようと目論んでいる
ふたりは並んで、河川敷の道を自転車を押しながら歩く
対岸に引っ越した仙太郎君…スクルドはそちらの方を見ると
家々の中に、ひときわ高い鯉たちが所作なさ気に垂れ下がってた
「ああ…今日は風が無いからなぁ…」
と、つぶやく仙太郎君に
「そうか…元気がなさそう…かわいそうね」
同情するスクルド…でも!
「でも、風が吹いて来たら雨になりそうだし…だから」
だから、今はこのままでも良いかな、と考えていた。


「5月5日は、端午の節句。男の子のお祭りなんだ」
「だったら、女の子のは?」
「それは3月3日だよ」
面白いな〜とスクルドは思う。
いわゆるぞろ目の月日が、何かの記念日になってるんだ…
「じゃ、じゃあ…6月6日は?」
「えっと…なんだっけ?」
考え込んでしまう仙太郎君、そして
「んじゃ、これは?7月7日は?」
と問いに問いで返す荒業をしてしまう


「7月7日?そんなの決まってるじゃないの!」
藤島センセーの誕生日よっ!と声を大にして彼女は言った(笑)


誰だろう?と訝しげに思う、仙太郎君だった…


その時、突然…それはやって来た
スクルドの大声に感応したのか、天空から小さな飛来者の到来だ
「…あ、雨?」
「急ごうっ!」
仙太郎君は、あわててスクルドの手を取って走り出す
もう片手にはBMXと言う、実に奇妙な感じなのだが、それでも
彼女を雨にさらす訳には行かないと思ったからだ。
河川敷を歩いていた彼らの前方には橋がかかっていて、その下なら
何とか雨宿りが出来そうな気配だった。


息せき切って走ったものだから、やたら体が熱い…
そして、その熱は手を握ったままのふたりを共有するかのようだった
「あっ…」
ふたり、思わず手を離してしまう
心なし彼女の顔が蒸気しているのは、走ったせいだけじゃないはず
なのに…なのに、このふたりは何もしない(苦笑)


皐月雨に風…それまでしな垂れていた家々の鯉たちが、その最中に
泳ぎだすのだった。
「わぁ!仙太郎君っ!見てみてっ!」
それは、まさに水を得た魚…水中を泳ぐように見える
「おぉ!本当だっ!泳いでるよっ!」


ふたりは橋の下から、それを見ていた
それは突然の贈り物のような、雨のおかげなのかも知れない。


やがて雨は降り止む
雲の間からは、青い空が顔を出し始める
天の雫により、浄化された空気に光が当たり始めた時
鯉たちが、天空に昇る龍に変化したかのように見えた。
君達の恋も、そんな風に成就すれば良いな…。



 

ああっ端午の節句 ある日のふたりは…   

by belldan Goddess Life.