Summer Breeze 2

「ただいま帰りました〜お客さまをお連れしたのよ」
外出前、玄関先に水撒きをしたのだが、いまではすっかり
乾いていて、それでも幾分涼しさは残っていた。
ベルダンディーは買い物籠と子猫を抱きかかえて框に入る
その声を逸早く察知したのはスクルドだった。


「おかえりなさ〜い おねーさまぁ」
いろんな思いが交錯して、まぁでもそれはいつもの事
アイスだとか、アイスだとか…もちろん最愛の姉の事も
あって、バタバタとお出迎えに出向く訳だ。
「お客さまって…どこに?おねーさま?」
玄関先を見るも、姉の姿だけしか見当たらず、あたりを
キョロキョロと探すのだが、誰の存在も感知しない。


「暑いってぇのに…ウルサイわねぇ…」
その姿は、すでに全裸か?と思わせる衣装で登場したのは
長女のウルドだった。
「またそんな格好をしてぇ!」
末っ子の講義を無視して
「で…お客ってどこ?」


「ここよ 姉さん スクルド
ベルダンディーはそう言って、自分の胸元に目線を下げる
子猫は、ちょっと怯えていて、その顔を胸に埋めていた。
「え?え?」
「あらあら へぇー」


「ほら 猫さんですよ」
にっこり笑うベルダンディーだった。
買い物籠を置き、もうひと手に居る子猫を見せながら
「道に迷ったみたいで…それにお腹も空いているみたい」
その時、小さな声で「にゃお」と鳴いた黒い子猫。


「へぇ〜 ってヴェルスパーじゃ無かったの?」
「え?え?ちょっとよく見せてよ〜!」
「違いますよ だってヴェルスパーなら、ほら、あそこに」
ベルダンディーは縁側の方を見た。
日差しが隠れる場所を上手に探して、ヴェルスパーは惰眠を
貪っていた。


ウルドは子猫の額をジィーと見詰める
「うん 額に変な模様も無いし…」
その声がピンと張った耳に、否応無く届く
それは高性能集音機のようなものなのかどうか、それは知らない
だが、惰眠を貪るヴェルスパーは、その肢体をムックリと起き上げ
トテトテと玄関先にやって来た。
「また何か噂してるのか…今度は一体なんだ?」
ファ〜と大口をあけて欠伸をして、これまた最愛の女神の胸元を
見た。その時だった。
「あ、あれ?? その子猫は…まさか…」
まさか何だ?思い当たる節でもあるのだろうか、それは良いとして
女神さまっ達は、子猫とヴェルスパーを交互に見遣った。


「まさか、あんたの隠し子?」
ウルドは、その鋭い目をヴェルスパーに向ける
「まさか!違うぞ!それに俺は男…ってアレ?」
くっそー身体的にはメスなんだよな俺って…


「不潔だわー!ヴェルスパーって!」
スクルドは軽蔑の眼差しを彼に送った
「だ・か・らぁ〜!違うっつーの!」
何で俺が虐げられるんだ?と思う訳だった。


ベルダンディー 帰ったのかい?」
森里屋敷(自室)から、ヨレヨレのTシャツ姿で登場したのは
ご存知、森里螢一。
「あ、螢一さんっ お客さまですよ♪」
ベルダンディーは「ほら♪」と言って、子猫を目の前に
見せてみた。
「ええ〜!お客〜!どこだ?どこだ?」
螢一はベルダンディーの背後を見るが、誰もいない


「あんた バカァ〜? おねーさまの手を見なさいよっ」
「っんとに…何でこう騒がしいのかしらねぇ...」
スクルドとウルドの辛辣な指摘にもメゲナイで
「あ…猫だ…」


「猫さんですっ」
「猫よ」
「猫に決まってるでしょ!」


「猫か… って、アレ?ヴェルスパーは?」


「俺なら ここに居るっつーの!」
その時だった、子猫はベルダンディーの手からスルリと抜け出して
見事廊下に着地、トコトコとヴェルスパーの元へと歩き出した。
「にゃおん」



Summer breeze 2.


by belldan Goddess Life.