Summer Breeze 3

不思議にとても無防備で、その子猫はヴェルスパーの元
顔を近づけて、匂いを嗅ぎ「にゃお」とまた鳴いた。


ヴェルスパーは無意識に、子猫の毛つくろいをする
それは猫の本能か、それとも母性の表れなのか…
「まぁ♪」
「へぇ〜」
「うわ〜」


「やっぱりオマエの子供だったのか…」


反論するのも面倒くさい…そう思ったヴェルスパーは
子猫の首根っこを咥えて、縁側の一番涼しい場所へ移動する
陽射しを遮るその場所は、夏のお気に入りの場所だ。
子猫はとても従順で、ヴェルスパーのされるがままになってる
そして、その子猫はヴェルスパーの腹部に頭をうずめて
何やら催促をして来たのだった。


「って!出ないって!」
ヴェルスパーは思わず叫んでしまう
「お乳なんて出ないってば!」
それでも子猫は、乳首を探し出して口に頬張ろうとした。


「まぁ♪」
「へぇ〜」
「うわ〜」


「やっぱりオマエの…」


「二度も復唱せんでええわい!」
女神達を方を向き、大声を出すヴェルスパーにつられて
子猫も「にゃー!」と鳴く。


割と息が合っているのだな…


「そうそう、お腹が空いていたのよね」
ベルダンディーは、思い出したかのようにそう言うと
「私、お昼の支度をしなきゃ 待っててね♪」
いそいそと厨へ向かった。
「おねーさま〜あたし、アイス〜!」
「ま、どうでも良いけどね…」
スクルドとウルドは、ベルダンディーについて行った。


残された螢一は、取り合えず、する事が無くて
ヴェルスパーと子猫をじっと見詰めていた。
「実家にいた時も、こんなシーンを見たような気が…」
彼の思い出、それは幼少の頃飼っていた犬の事
小さな子犬…産まれたばかりのそいつが森里家に
やって来た事を思い出していた。


小さな俺と、小さな犬…まだ何も分からなくて、でも
お互いがお互いを信頼して、育って来たんだな…
名前を日本丸と決めて、いつまでも一緒だと思ってた。
まだ日本丸が、母親の所で乳飲み子だった頃に見た時と
同じなんだよな…これって…


夏の午後、縁側の涼しい所で二匹の猫が居る
時折風が吹いて、以前ベルダンディーが付けた風鈴が
チリンと音を立てて、風の音を奏でて行った。


Summer breeze 3


by belldan Goddess Life.