Summer Breeze 4

「とっても美味しかったよ ベルダンディー
「ありがとうございます♪」
お昼に素麺を頂いた螢一は、満足そうにしている
その姿を見ているベルダンディーも幸せそうだ。
「螢一さんっ お茶です♪」
「ありがとう」
冷たい氷の入ったグラスを満たすのは
夏の定番の麦茶だ。
「夏はこれだねっ」
「ふふ♪そうですね」


のんびりした午後、ふたりは夏休みを貰った
でも、こうして自宅で寛ぐのは満更でもない
ワール・ウインドの店主、千尋さんは
「ちょっと仕入れも兼ねて、海外にバカンスよっ!」
と、従業員である螢一とベルダンディー
強引ではあるが、夏休みを進呈したと言う次第だ。
もちろんボーナスも無いし、手当てもないが、それでも
二人は、このお休みをとても楽しみしていた。


どこかで二人きりになりたいもんだよなぁ...
そんな切実なる思いを持った螢一だが、成就の可能性は
かなり低いと思う。
例え二人きりになったとしても、何をどうして良いのか
いわゆる手順とか、何も思い付かないし、マニュアルとか
そう言った類は、過去に捨ててしまったし...


「ばかねぇ…夏の定番はコレよっ!」
そう言ってジョッキ掲げたのはウルドだった。
並々と注がれたビールを腰に手を当て、グイグイ飲む姿は
まさか女神さまっだと誰が信じようか
「昼まっからビールは止めようよ」
螢一は、ヤレヤレといった風情で窘めるが
「何を言ってるのよっ!コレが一番なのよっ〜」
さらにグイグイ行くウルドであった。


ま、言ってみればウルドの活力元でもある酒だし
これさえあればウルドは上機嫌だし、良いか...


「ほんとウルドって下品よねぇ あたしはアイス!」
アイスがあれば一番なのよっ!と興奮しているのは
スクルドだった。
「ああ、そうだな…冷たいしな…」
螢一は、さらにヤレヤレと思った。
「そうよっ!冷たいアイスが一番なのよっ〜」
どんだけ食べるんだよ…ハラ壊すなよ。


これもスクルドエナジー・チャージだし
これさえあれば…


「螢一さんっ?どうしたんですか?」
麦茶のおかわりをグラスに注ぎながらベルダンディー
心配そうに螢一の顔を覗き込む
「え?あ…いやいや、何でもないよ」
嬉しいけど、そんなに顔を近づけないでよ、と思う
だってそうだろ?こんなにキレイで優しい女神が
俺の事を心配してくれているんだぜ?
しかし、何にも出来ない自分が情けないなぁ...
それもその筈、姦しい姑って言うか、姉と妹の監視の中
何をどうせよ、と言うのだ?まぁ、良いか...


庭の蝉時雨を聞きながら、螢一はふと思う
海にでも誘おうかなぁ...
あ、俺…泳げないか…でも、休みだし、夏だし…
「あのさ…ベルダンディー
「はい?何ですか?」
「海を見に行かないか?」
「海ですか♪わぁ〜」
出来れば二人きりで…そう思ったのだが
「海ねぇ…良いわねぇ」
「わたしも行きたいっ!わーい」
いつもの事だが、こうなってしまうのは宇宙の法則なのか?
それとも俺の宿命なのか?


縁側で避暑を取るヴェルスパーと子猫は、お昼寝している
時々、耳をピンと立てている
螢一たちの話を聞いているのだろうか
それとも夢の中で何かしているのだろうか...



Summer Breeze 4.


by belldan Goddess Life.