Summer Breeze 4.5

海を見に行く…とは言ったものの、さしたる準備も
しないまま、このままシェスタを決め込むのも悪くない
そう考えていた螢一だった。


「ふぅ〜」
美味しい昼食に満たされた俺と、俺のハラ…
ちゃぶ台を前にして、そのまま仰向けに倒れこむ
このまま眠ったら、気持ちいいだろうなぁ
「螢一さんっ?どこか具合でも…」
心配そうに俺を見詰めるベルダンディー
「い、いや…すごく美味しくってさ、それに」
それに、この満たされた体が次に求めるものは
つまり…睡眠なんだよな。
「ああ、お昼寝ですかっ!よかった!」
何が良かったのだろう、それにしてもマジで眠いや


「螢一さんっ あの…お布団が良いですか?」
それとも、何かタオルケットのような物が…と
ベルダンディーは俺に尋ねてくる
「あ、タオルケットの方が良いかな?」
俺は眠い目をこすりながら言った。


縁側から続く居間に、小さな枕とタオルケット
それになぜか団扇まで用意してある。
不思議に思うのだが、まぁ良いか…暑いのだし
それにしても、相変わらず縁側の涼しい所では
二匹の猫が寝ている…


そんな訳で、俺の昼寝用寝床が完備されて
俺は安らかなシェスタの波に乗り、夢の航海へと
旅立つ事になるのだ。


ジリリリ〜ン ジリリリ〜ン


家の黒電話が激しくコールしている
何だ何だ?誰からだろう?と寝ながら考えていると
「私、出てきますね」
ベルダンディーは、螢一のそばから立ち上がり
そのまま玄関先に歩いて行った。


「はい、森里です♪」
キレイな声が、居間にまで響いてくる
ベルダンディーの声って、本当に癒されるなぁ
「まぁ♪あなたなの!お久しぶりね」
あれ?いったい誰だろう?久しぶりって事は天上界の
誰かなのかな?ペイオースとか…
「あら、ペイオースにも会ったの!」
あ、ペイオースじゃないんだ…
「ええ、こちらはとても元気よ あ、そうだ」
誰が元気なんですかねぇ?
「一度、こちらにも遊びにいらっしゃいな」
え?え?一体誰だろうか…
「それでは、ごきげんよう♪」


ニコニコ顔で居間に戻ってきたベルダンディー
螢一のそばに来ると
「螢一さん、今日は嬉しい知らせがありました」
「うん、君への電話だったみたいだね」
「私の教え子だった方からの電話だったんです!」
「へぇ〜 で、その方が遊びに来るのかい?」
「ダメでしょうか…」
「そんなの良いに決まってるよ」
「ありがとうございます、螢一さんっ」


その教え子の名は、女神マリーミと言った
「私にとても似ているんですよ♪」
ベルダンディーは我が事のように喜んでいる。
夏休みは、始まったばかりだ、何も問題は無い…はず。


ウルドは、何やら新しい水着の購入とやらで
先程、どこかへ出掛けていったらしい
一体どうやって手に入れるのか、考えただけで怖いので
考えないようにしよう。
スクルドは、自室に篭って、何やら怪しげな物を
製作しているに違いない…たぶん、ばんぺい君にまた
怪しげなアイテムを掲載して、俺を困らせるのだろうな。


しかし…俺は海を見に行くって言ったんだぞ
海に行くとは言ってないぞ!
しかも二人を誘ってもいないぞ!


「はぁ…」
タオルケットを体に巻きつけながら、ため息を付いた
それを見ていたベルダンディー
「螢一さんっ?寝苦しいんですか?」
止めていた団扇を扇ぐ手を動かしながら
「あの…もし良かったら ね」
そう言って枕を外し、俺の頭を彼女の膝に乗せた
「扇ぎやすいんです…この方が…」
そう言いながら頬を染める女神に、誰が抗えようか
「…あ、ありがとう」
見詰められている俺の顔は、多分真っ赤だろう
そのせいか、彼女の扇ぐ団扇にも力がこもって来る


風が心地よい…




Summer breeze 4.5


by belldan Goddess Life.