Summer Breeze 6

夢の中の俺は、たぶん俺以上に貪欲な存在だ。
あらゆる理性と言う秩序は、融解されて本能だけの存在になってしまう。
思い即行い…しかしこれは、原始からの人の行動原理だとも言えよう。
ただ…ひとつ違うのは、それが少なくとも感情と言う分野の中にあるもの
言い換えれば、愛と言う稀有な存在、そして普遍的にある存在、さらに
求めて止まぬ存在が、確実にそばに在ると言う事だった。

「君は誰だ?」俺は問うた。
答えは返ってこないが、その優しげな微笑が、もしかしてたら答え
だったかもしれない。
俺は、閉鎖された空間の中で、俺自身が最も望む行為をしようとした。
そばにいた者は、それを快く受け入れ、俺たちはひとつとなった。


それをある者は、宇宙の統合と言うかも知れない。
それをある者は、ただの性行為だと言うのかも知れない。
だが俺は、俺の思いに素直に従う事を望んだ。
そして、その者も、その行為に従ったのだった。



「う…ううん…」
俺は寝返りを打ったらしい・・・らしいと言うのは
それもそのはず、寝ていたからに他ならない。
その寝返りを打った空間、もちろん何も無いと想定していたはずも
無いのだが、現実には在ったのだ。
ベルダンディーがスヤスヤと寝息を立てている。
気がつけば、俺の左腕の中にすっぽりと入って寝ているのだ。
「おわっ!」
驚いた俺だが、急に起き上がることも出来ずにいた。
潜水艦なら、緊急エマージェンシーブローで急速に水面に顔を出したい
所だが、それも出来ず、だた事の成り行きを推考するだけであった。


なぜ?どうして?ベルダンディーが俺の腕の中で眠っているのか?
そもそも俺は、彼女の膝枕でウトウトとしてて、そのまま寝てしまった
その後の記憶が無い…


ただ、なぜだか夢に見た、ある行為だけが鮮明に脳裏に映るだけ
もしかしたら俺は、無意識の内に、やってしまったかも知れない…
しかし、身体に何ら痕跡も見つからない…
「これはどう言う事だろう…」
ベルダンディーが眠りから覚めたら、尋ねて見たい気もするが
そんな度胸が俺にあるのだろうか。


そんな折、ウルドが帰宅して来た。



Summer Breeze 6.


by belldan Goddess Life.