Summer Breeze 7

それは兎も角としても、ウルドいつも一体何処から
物品(お酒の類とか)を入手しているのだろう。
しかしあの美貌だ…俺達の知らない世界を持っていて
そこには貢物を差し出す女王の配下とも言うべき存在が
いるのだろう。


今日もそんな感じで、両手に抱え切れないほどの献上物を
重力シールドを施した彼女は、俺達の前に現われたのだった。
「ただいま〜」
いつものお気楽ボイスが響く。
俺は自分の置かれた状況の収拾を付けるのに暇が無いのだが
だが、肝心のベルダンディーが起きなくてはどうしようもない。
状況はかなりの困難を極めているが、それでも何とか言い訳を
考えようと躍起になっていた。
「あれ〜?誰も居ないのかなぁ?」
そうやっておもむろに居間の襖が開かれてしまった。


「あ…ゴメン(笑)取り込み中だったのね」
「あ…い、いや、この…それは・・・」
「まぁ、いいわ がんばってね」
ウインクひとつ残してウルドは立ち去った。
しかし考えてみると、ウルドで良かったと思う。もしこれが
スクルドだとしたら、戦況は非常に困難だったと言わざる終えない。


程なくして、ベルダンディーの安らかな寝顔から綺麗な目が開く
「あ…私、眠ってしまって…螢一さんっ」
眠りから覚めた、その瞳は潤んでいて、吸い込まれるようだ
そして、彼女は俺を抱擁した。
「え?」
この大胆な彼女の動作に、俺の思考回路は今にもバーストしそうだが
それでも何とか持ち応えたのは、日頃の訓練の賜物かもしれないが
そんな訓練は嫌だなぁ〜と思う。
「ベ、ベルダンディー…その…あの…おはよう」
在り来たりな呼びかけだが、何をどうせよ?と言うのだ。
「おはようございます 螢一さんっ」
彼女の腕はそのまま俺の背中に回り込んでいる
「あの…そろそろスクルド達が帰ってくるかも…ね」
冷や汗ものだ、と俺は思う。
「そうですね…そろそろ夕餉の支度しなきゃ…」
実に残念そうに俺の背中に回った腕を解き
「螢一さんっ」
そう言って、彼女は俺の唇に唇を合わせたのだった。


じゃあ支度をしますね、と言ってベルダンディーが俺から離れるのに
かなりの時間を要したと言えよう。だがそれは相対的な時間と言われる
ものでしかなかったのが事実なのだが...
居間に残された俺は、事の次第を反芻した。
記憶に残る、夢の断片から鑑みれば
俺達は同じ夢を見ていたかも知れない。
それとも俺の思い過ごしなのだろうか。
ブランケットに残る彼女の香りが、何だかとても生々しかった。


縁側を見れば、あたりは夕暮れ時の茜色をしていた。
風が時折吹いてくる。それを風鈴がチリンと優しく受け止めていた。



Summer Breeze 7.


by belldan Goddess Life.