Summer Breeze 7.5

縁側に猫が居る、それも二匹。
大きい黒猫と、小さい黒猫は、それぞれ丸くなって
眠っている。
小さな黒猫は、夢を見ているのだろうか
時々ニャウニャウと何かを言っているようだ。
その都度大きな黒猫は、子猫の顔をなめて
それはまるで窘めるかのような仕草だった。


日中の日差しから、しかし未だに上昇している気温と
空気中の水分が分散したような空気の中で、時刻は
夕暮れを指していた。


猫の見る夢…どんな夢を見ているのだろうか。


太陽が真上に鎮座している昼間から、西の空をと
その雄大な姿を移すと同じく、影もその姿を移動する
そして猫たちも、それに倣って密かに移動をしていた。
庭にある池の中から、魚が跳ねる音がした
猫たちは、その習慣からなのか、耳をピンと立てるが
それでも何もしない。
しかしヴェルスパーは、突然現われた、この小さな猫の事を
多岐面で検索していた。
見るからに普通の猫だ…彼はそう考えるのだが、何か一抹の
不安と言うべきものが去来するのはどういう訳だ?


猫としての存在を余儀なくされて、そんなに年月は立っていない
だから本来の猫と言うべき存在定義が、情報だけにしか頼れない
それが懸案なのだ。
もし本能として猫の存在を捕らえれるのなら、いとも簡単に
答えは出るだろうが、肝心の本来の猫との交流が希薄なのが
彼の弱点だったとも言えた。


「くっそーガールフレンドでも作りゃ良かった…」
っと…俺の形態はメスなんだよなぁ…
だからこの場合は、彼がボーイフレンドを作る事となる
何だか避けたい…非常に避けたい…そんな気持ちもあって
状況は解決には程遠い岐路にいた。


そして彼には天上界と魔界との契約上として取り扱われる
タブレット制度の相方がいた。
それが女神ベルダンディーなのだった。
彼は契約上とは言え、心密かにベルダンディーを慕う者であり
猫に転生したとは言え、その思いは変えれるものではなかった。
どんな状況下であっても、俺は彼女のそばに居ようと
そしてそれは、女神を護ろうとする思いであった。
もっとも彼の属性は魔属なのだが...


何か大切な物を忘れている。そんな気がしたヴェルスパーは
これから何が起こるのか分からない、そんな不安な気持ちを
眠りに溶け込ませていた。
でも明日になれば、全ては忘却されてしまうのだが...


厨から夕餉の支度をする女神の鼻歌が聞こえてくる
それはまるで風のように、周囲に清涼感を与えていた。



Summer Breeze 7.5


by belldan Goddess Life.