Summer Breeze 8

程なくして帰宅して来たスクルドの機嫌がすこぶる良い
もし見えるとすれば、彼女の背景にはお花畑が在って
白い帽子と、可憐なワンピース姿の乙女を彷彿させる佇まい
の様だと思う…たぶん。


「ただいま〜おねーさまぁ!」
そして何やら手にはお土産らしき物の存在もあった。


そんな訳で4人が夕餉を囲む事となる訳だが、それぞれが
とても機嫌が良い・・・
まぁベルダンディーに至っては、機嫌が良いは普遍的な訳だが
ウルド、そしてスクルドは何やらワクワク感が漂っていた。
俺としては、ちょっとした後ろめたさが滞在中で微妙な感じだが
何にせよみんなの気持ちが良いのは在り難い事である。


「今日も大漁だったわぁ〜さあ!祝杯を!」
ウルドの両脇には、日本酒が二本ある。
「仙太郎君に買ってもらったんだぁ〜」
行き付けのアイス屋さんのパックを開くスクルド
「あらあら、良かったわね」
ベルダンディーは、俺の食事の支度をしながら上機嫌だ。


とにかく良かった・・・何も無くて・・・と俺は安堵の息をつく。


夕食が終わって、ぼんやりとTVを観ていると
スクルドが何だかソワソワし始めた
「あ、あのね…これから出掛けていい?」
姉のベルダンディーを上目遣いで見ながら尋ねている
「え?何処へ行くの?」
どうしたのかしら?とベルダンディーは思った
「あのね、今夜河川敷で花火大会があるんだって…それでね」
それで、仙太郎君と見に行く約束をしたらしい。


いつものウルドなら「おっ!それはあたしも見に行かないと!」
そんな事を言って、お祭り騒ぎになるのが常なのだが
「ほ〜やるわねぇ…ま、がんばってね」
TVを観ながら、興味なさそうな返事を返した。
ウルドの様子が変だな、と思いつつも俺は何気に
「遅くなりそうだったら電話してこいよ、迎えに行くからな」
と言うと
「螢一は来なくていいよ!ちゃんと仙太郎君が送ってくれるもん」
フンだ!と言わんばかりに息巻いてくる。
スクルド 浴衣を着てみる?」
ベルダンディーは、可愛いのがあるのよ〜と言って、スクルド
連れて行った。


やがてスクルドの部屋からふたりが出て来た。
ピンクの下地に青い花火が踊るような模様の浴衣を着たスクルド
少し照れながら
「ど、どうかな…」と照れながら聞いてくる
「どうですか?螢一さんっ」
ベルダンディーも聞いてくるので俺は
「うん、とても夏らしくて良いんじゃない?」
「良かったわね スクルド
笑顔でスクルドの方を見ると
「べ、別に…螢一の為に着たんじゃないんだからね」
プイと後ろを向き
「じゃあ、あたし…行って来る!」
そのまま玄関へ走り去るスクルドであった
「あ、待って…下駄を用意するから」
その後をベルダンディーが追いかけて行った。


「邪魔者…じゃなくてスクルドは行ったみたいね」
それまで傍観者であったウルドが、突然俺の方を見る
「な、何だよ…」
俺は得体の知らない戦慄を覚えた
「後でね、あんたとベルダンディーに聞きたい事があんのよ」


一体、ウルドは何を聞きたいのだろうか?まさか昼間に起こった
それは不可抗力の出来事の事なのだが...



Summer Breeze 8.


by belldan Goddess Life.