Intermezzo...

それは先月7月7日の事だった。


 「はい、分かりました どうもご親切に」
ベルダンディーが誰かと電話をしていた…していたと言うより
かかって来た、と言う方が正解だが、それでもちょっと長くないか?
俺は台所の前、つまりTVが置いてある部屋、通称みんなのティールーム
で、夕食後の満腹感と倦怠感に溺れそうになっていた。
少しの不安と好奇心とで、どうにか体制を保ちつつも、すごい聞き耳を
立てていた訳だ。


「あ、螢一さんっ あのですね…」
電話の相手は、日本ポニーテール協会と言って、何やら彼女を
賞賛し、その見事な髪型に敬意をはらって賞を進呈しようと言うのだ。
その旨の挨拶と、近々記念品を発送するから、と言う事で電話をして
きたらしい…。
「ポニーテール協会ねぇ・・・ホント不思議なものがあるなぁ」
俺は、どこでどうしてベルダンディーの所在を知ったのか、その方が
とても気になるのだが、彼女は始終ニコニコ顔であった。
「とても親切な方でしたよ」
「へぇ〜」
「あら?螢一さんっ…もしかして、ヤキモチですか?」
「え?・・・えっと、その・・・」
「ふふふ・・・でも良いです ちょっと嬉しい♪」


ベルダンディーは、空になっていた俺の湯飲みを見ると
お茶のお代わりを淹れてくれた
「あ、ありがとう・・・」
満面の笑みをしている女神さまっの横で、俺は何をどうしたいのだ?
嫉妬とか、ヤキモチとか、そりゃあ俺だって人並みにはあるけど
傍に居てくれてる女神さまっの、その優しい存在に何か不満でも
あるのだろうか?と自問しても答えは何時だってNOだ。


俺は、とても幸せなんだよな。


「わ〜観忘れてた!」
ドカドカとウルドが自室から飛び出してきた。
「ねぇ何時?今何時?」
「えっと…8時半位かしら?」
ベルダンディーは柱時計を見ながらウルドに言うと
「わっちゃ〜 もう半時間も過ぎてるし…」
その場にヨレヨレと座り込んでしまった。
昼間、折角スクルドとの対戦で勝ち得たチャンネル権だったそうだ
日頃の研究熱心さが祟ったわ…とウルドは言うが、とても微妙だ。
「残念だったな ウルド」
俺はニヤリとして、事の次第を伝えたがウルドは
「何が残念なのよ〜! よ〜し、こうなったら!」
ウルドが法術を唱和し出した。
「止めてっ!姉さんっ!」
ベルダンディーは、咄嗟に止めに入る。
どうやらウルドは時間を遡行してTVを観ようとしたらしい
「わっわっ!止めろ〜ウルド〜!」
俺も…何も出来ないが、反論を繰り返す。


「うっさいわね!何騒いでるのよっ!」
これまたスクルドが自室から飛び出して来た。
「ちょうど良かったわ スクルド、姉さんを止めてっ!」
ベルダンディーはウルドの法術に対してアンチ・シールドを
施しながら、スクルドに支援を求める。
「え?え?何?」
みんなのティールームがえらい事になっている…


そしてお決まりの暴走、しかし最小限に被害を抑えれたのは
幸いであった。
その被害とは…件のTVだったのだが、これは自業自得か
「あんたのせいで、TV観れなくなっちゃたじゃないの!」
「ふ〜んだ!あたしだって観たい番組観れなくなったからね
もう良いわよ!TVなんか無くたって!」
「な、何ですって!もう一度言ってみなさいよ!」
「何度でも言ってやるわよ!スクルドのばーか!」
「だ、誰がバカですって!キィー!」


「姉さんっ!スクルドっ!もう止めてっ!」
ベルダンディーの静かな怒りがそこにあった
「あ・・・」
「ち、違うの…お、おねーさまぁ・・・」
それでもベルダンディーの静かな怒りは収まらないので
ウルドとスクルドは、すごすごと自室へ退散した。


「ご、ごめんなさい…螢一さんっ 大丈夫でした?」
「ああ、俺は何とも無いけど…あのさ」
ちょっと言い過ぎなんじゃないかな?と彼女に言うと
「でもでも…螢一さんっにお怪我をされちゃ…私」
ちょっと涙目になっている女神さまっがいた。
「だ、大丈夫だから!うん、俺は大丈夫だよ」
だから泣かないで、と俺は言葉を続けた。
「螢一さんっ・・・」
「いや、その・・・あはは」
急展開な経緯、そしてそれは日常茶飯事なのだが
それでも俺は、とても幸せなんだよな、と思った。


だって君が傍に居るんだから。



Intermezzo...


by belldan Goddess Life.