Summer Breeze 9

この宇宙には、たくさんの銀河がある。
そこにはまだ見知らぬ存在が在って、それぞれの
世界を構築している。


この世界にも、たくさんの世界が重なり合って
その存在も知られず、干渉もされず折り合っているのが
事実なのだった。
位相空間、平行宇宙、あるいは異世界と言った存在もまた
大宇宙を構築する世界なのである。
それがどんな小さな世界であっても宇宙の真理として
作られるのを良しとされていた。


世界は生まれ、進化し、円熟して衰退して行く…



ウルドに呼び出された俺とベルダンディーは、ウルドの
部屋を訪れた。
「ここなら大丈夫よ 法術でシールドしてあるから」
かなり真剣な面持ちでウルドがそう言うから
これはかなり大問題だと悟った。
「姉さん・・・話って何ですか?」
ベルダンディーは改まってウルドの話を聞こうとしていた。
「そうだよ…大げさなんだよなぁ」
俺が嘯いて言うと
「大げさにもなるわよっ!あのねぇ…」
あんた達の仲は、そりゃ認めているわよ…姉としても
嬉しいくらいよ…でも、でもね…
そこまで言うと、ウルドはちょっと悲しい表情をして
「ちょっと聞くけど、あんた達はどこまでいったの?」
「どこまでって・・・」
「あの、姉さん?私なら今日はどこにも出掛けてないですよ」
ウルドはため息を付く、そして
「あのねぇ、そのどこまで…って事じゃないの!」


ウルドはテーブルに用意したワインを飲み干すと
「あんた達…やったの?やってないの?」
「何をですか?」
「なんだろう・・・」
「だー!もぅ!…初心なネンネじゃないんだし!」
ウルドは飲み干したグラスにワインを注ぐと、それを
一気に飲み干した。
「あ・の・ねぇ…セックスしたのかって聞いてるのよ!」
「う・・・何聞いてるんだよ!ウルドは!」
「あのぅ…姉さん?」


こりゃ実際にはやって無いな、とウルドは頭を抱えた。
それもその筈、人と女神との性行為には幾分かの支障が
付き纏うのだ。
解決法としては、女神の方が人間に歩み寄る形になるが
原子レベルの再構築をして、さらにある種の加味を施し
何とか形になる、という訳だ。
1級神非限定のベルダンディーなら、そんな事は造作も
無いのだが、このふたり…何か受けを狙っているのか?


「どうしてこんな話をしたかって言うとね」
ウルドは、抱えていた頭を前に上げて
「実はね、新しい世界…空間って言っていいわ…」
それが生まれたのよ、と言った。それから
「これはあんた達が作った世界なのよね」
夢を覚えてる?とウルドは言葉を続けのだった。


悪いけど、あんた達の夢を遡って見させてもらったわ
さっきの事もそうだけど、あんた達は同じ夢、同じ世界で
お互いを求め合っていた。それは愛するもの同士だもの
理由なんて要らないのよね。
異世界同士の結合…そこに世界が生まれたのよ。
構築されて行く世界は、日増しに進化を続けて行く…だから
この現在(いま)のあんた達も、それを追従しなければならない
そうしないと、あんた達までもが、遅かれ早かれ衰弱し解体し
消えて無くなってしまうわ...


「ど、どうすりゃ良いんだっ!」
「姉さんっ…」
「だから…ね しちゃいなさい」


この世界のどこかに、俺とベルダンディーの世界が在る
おぼろげな意識の中で微かに残る記憶の断片が
その存在を確かな物として捕らえて行く。
思いは形になる…愛し合うふたりだからこそ、そうなって
しまったのも事実だが、これはふたりが犯した原罪みたいに
ふたりを取り巻くのであった。


そして、夜は深まっていった。



Summer Breeze 9.


by belldan Goddess Life.