Summer Breeze 10

小鳥たちが、声を揃えてさえずっている
サワサワと木々の揺れる音、風の囁く音
そして、夏の音と言えば蝉の楽団だ。


その音に目が覚めた俺は、昨夜の事を考えてる
ウルドの言った言葉、その意味を俺なりに検討している
「まさか…ウソだった…だなんて、後で言わないよな」
天井のシミを見つけては、何かの形に似ているとか
そんな事も考えながら、ふと寝返りを打って気がついた。


俺は…今、彼女と共に寝ている…


ベルダンディーは、俺の隣でスヤスヤと寝息を立てている
その美しき寝顔に、俺の鼓動は早鐘のようになる。
「そうか…」


俺とベルダンディーは昨夜、結ばれたんだ…





「先にお部屋で待っていてくださいね」
ベルダンディーはそう言って、風呂場へ行った。
俺は、先に風呂を済ませていたからね。


本当に彼女…女神さまっと…
言い様の無い不安と喜びが交差する思考に、ただじっとして
彼女が来るのを待っていた。


ベルダンディーが部屋に入ってきた時の事を覚えている。
洗い上げたその髪から、とても良い香りして
上気した彼女の顔は、とても艶やかで
この世の者とは言えない…って言うか、彼女は女神さまっだ。
ベルダンディーは、襖を閉め、俺の横に座った。
「螢一さんっ お待たせしました」
その潤んだ瞳に、俺は吸い込まれそうになってしまう
「うん…」
「螢一さんっ どうしました?」
「いや…何でも無いよ」
「そう、ですか…」
その時、彼女の瞳にも不安が浮かんだ気がした。
そうか…きっとベルダンディーも不安なんだ…


「上手く言えないけど…大丈夫だと、思う…だから」
だから、不安な気持ちにならないでほしい、と俺は思った。
「螢一さんっ…私…あの…」
ベルダンディーは、俺と向き合って言葉を続け
「私…螢一さんっの事が…好きです…」
「うん、俺もベルダンディーの事が好きだよ」
どうしてだろう…ふたりだけの空間だからかな?素直に言える
「ああっ…螢一さんっ」
ベルダンディーは俺に抱きついて来た。そして俺も抱きしめたんだ。


もしかしたら、これが最初のキスなのかもしれない。


色々紆余曲折あって、それは物理的な行動(キス)もあったが
事象に対しての必然的処置ばかりだったからな。


ふたりの初めてのキス…


それは、ちゃんと恋人同士、愛し合う者どうしのキスだった。


明かりを消した。
その方が良いと判断したからだ。もっともマニュアル通りなんだが
何も知らない以上は仕方の無い事だと思ったからだ。
薄明かりの中、彼女の香りを探した。
熱くて冷たい感触…心のままに彼女を求めた。


ふたりは、同じ世界で漂う船、波間に見え隠れする白き宝石
青き空を飛び立つ番いの鳥、雲間に見える安らぎの棲家へ...



Summer Breeze 10.


by belldan Goddess Life.