Summer Breeze 12

時の守護神の想い・・・。


広大な銀河をもその中に内包できる力を持ち
あらゆる次元を行き来し、あらゆる歴史への
干渉も出来得る存在…それがノルンの力だ。
そして、世界を構築し、破壊し、再構築する
活性化させる命も受けている。


過去、現在、そして未来と言う時間には
それぞれ個性があり、その存在自体にも意味があるが
ノルンの本質は、元来ひとつだと言える。


ウルドの話を聞いた俺は、その話のデカさに、まるで
意識がついて来れなくなる。
「つまり…ウルドやスクルドベルダンディーは…
ひとつの生命体って言うか…」
「そうも言えるわね…常に時間の中には過去も現在も
…そして未来も内包しているって言えば、分かるかしら?」
ウルドは言葉を続ける。
ベルダンディーが降臨して、その後、あたしとスクルド
どうしてその後を追ってきたのか…分かるよね?」
それは多分、ウルドは暇で…スクルドは姉を慕って…じゃ
ないのか?と俺は考えていた。だってそうだろ?
そのまんまの展開に俺達は翻弄され、波乱万丈な日常に
奔走して来たんじゃないのか?
「まぁ…それもあるけど ね」とウルドは苦笑した。


「これ以上、難しい話をしても、埒が行かないわねぇ」
ウルドはやれやれと言った感じで、そう言うと
「簡単に言えば、ベルダンディーとそう言う仲になったって
事はね、私たちノルンに大いに関与したって訳なのよ」
俺は思った…それって普通に考えれば、ウルドが義理の姉に
スクルドが義理の妹になったって事と同じ、じゃないのか?
「螢一に理解して貰おう、とは思わない だけどね…」
ウルドは言葉を続ける。
「あんたとベルダンディーが、ある世界を構築したのは
間違いの無い事実なのよ」
あり得ないって顔をして、ウルドは言った。


有史以来、ノルン達はあらゆる世界、歴史に関与して
たくさんの異世界人達と遭遇し、ある時は手を貸し
ある時は傍観者であり、しかし決してその痕跡を残す
事は無かった。ましてや、新しい世界を作るなんて...
ノルンの中で、現在を象徴するのがベルダンディーだが
その彼女が関心を持ち、愛してしまう存在が居る事自体が
すでに大きな奇跡なんだとウルドは告げた。
そしてノルンとしての私たち、つまり、わたしとスクルドにも
その情報、影響力は流れて来て、共感している。



「螢一さんっ・・・」
ウルド達とそんな話をしてて、煮詰まりそうになった頃に
ベルダンディーがやって来た。
とても不安そうな顔をしている。だから俺は何時ものように
「大丈夫だよ ベルダンディー
そうさ、俺は昔から慣れているんだよな、こんな事って。
巻き込まれ人生?優柔不断な性格?ただ、いつも感じていたのは
もしかしたら、この世界のどこかに、俺を必要としてくれる
そんな存在が居て、いつか、どこかで、きっと出会えると
そう感じていたんだ。


それが女神さまっ だったんだな…


「今、理解出来なくても、分かる時は来るんだと思う」
それで良いのさ、と俺は思った。
この現時点で、出来る事を最大に努力して行う…そこから
道は開け、扉は開き、壁のように見えた障害も消えて行くと思う。


それがどんな者であれ、愛する者と同じ時間を共有している事実
そこには、すでに真実はあると感じた。
求めていたものは、愛される事?
そうじゃないんだ。
求めていたものは、愛する事 愛を与える事だと
俺はベルダンディーの姿を見て、最初から感じてたんだよな。


「大丈夫さ 俺はベルダンディーを愛しているから」


夏の風が吹く、庭の木々の間を通り、縁側の風鈴を揺らす
そんな風に、さり気無く普通に言えたんだ。


何も変わらない日々、平凡な日常からしか本当の進化は無いと
思う。
ある夏の日に、俺は…俺達は劇的な進歩…進展をしたのだが
それらもほんの日常の一コマなのだと思った。


ただしこの夏の日は、大変な記念日であるけれどね。



Summer Breeze 12. END.


by belldan Goddess Life.



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Summer Breeze 以上で幕が降ります。
読んで下さった方々に感謝を込めて…有難うございました。


夏の夜の、ささやかな暇つぶしになれば幸いです。


by belldan Goddess Life.