Solid Black 4.

最初に異変を察知したのは、魔界長ヒルドだった。
ある異世界が消失…そのサーチを魔属戦闘部隊に命じたが
彼らからの音信が途絶えた。
事の次第を重く見たヒルドは、急遽地上界に降臨している
マーラーを帰還させたのであった。


執務室へと続く、長い回廊を歩くマーラー心中には
ある不安が去来していた。
まさか任務不履行で降格?それは大いに有り得るが
しかしまてよ…急な呼び出し…
「失礼します。1級非限定魔マーラー帰還しました」
瀟洒なドアの前に立ち、緊張を隠せずにドアをノックする
「入ってらっしゃい」
「はっ 失礼しますっ」
ドアをおもむろに開け、執務室へと入るマーラー
相変わらずこのお方は、何でこうも凄みがあるんだと
ゴクリと唾を飲み込んだ。
「どう?その後の地上界は?」
「はっ 特に何も…」
「ふぅん…じゃ、暇なんだ」
「はぁ…い、いえっ!そんな事は」
「ま、いいけど」
そんなやり取りが続く中、ヒルドは執務室にあるモニター
からマップを展開、件の事件があった場所を見せた。
「マーちゃん、コレどう思う?」
「すごく大きい…これって星が爆発した後ですか?」
「惜しいわぁ〜でも残念、違うのよ〜」
世界の消失…それもかなり大規模なものだった。
ぽっかり空いた黒い空間、そこには磁場も引力も無く
ただ漠然と存在していた。或いは存在さえしてないのか。


「ちょっと聞くけど、マーちゃん。あなた地上界にいて
何か不振な出来事とか、何でもいい、感じなかった?」
「ええ、特に何も…」
それより女神の斡旋でコンビニでバイトしてたなんて
バレる方が怖い…って言うか、もうバレてるかも…
「そう…」
気がつかないのも無理はないわねぇ、例え1級魔でも
この事態の深刻さには気づかない。それはあちらでも
同じよね。
例外として、わたしとあいつ位なもんよねぇ…気がつく
のは…そして遠い目をしてヒルドは
「とにかく、何があったのか見て来てちょうだい」
「はっ これより任務にかかりますっ」
マーラーは踵を返し、執務室を後にした。


とにかく、これは早い者勝ちだわよねぇ…そう思うでしょ?
ヒルドの瞳がキラリと光った。


ヒルドの命により、索敵チームを形成したマーラー達は
消えた異世界の探索に向かった。そこにあるはずの
世界は消滅しているのだが、何事も無かったようにも見える
世界が収縮したのか、あるいは初めから何も存在しなかった
そんな風にも見える。
「なんだこれは…」
あらかじめ用意してあったマップには、出発当初に記されていた
世界が存在しない事に気がつく
「じゃあ、ここはどこだ?」
かなり慎重を期して、ここに近づいたはずだ。なのに何故?

「隊長っ!我々の位置しかマップにありませんっ!」
チームのひとりがマーラーに訴えた
「なんだとっ!」
マーラーは隊員からGPSを受け取り、マップを最大拡大する
「ありえない・・・ ここはどこだ?」

アンチマジックシールドを施していたのだが
まったく役に立ってない。
マップはチームの位置以外を除いて正常に映っているかに見える
とにかく魔界に連絡を、と隊員に伝えるが
「だめです、感ありません・・・」

マーラーは戦慄した。
「飲み込まれた・・・」



Solid Black 4.


by belldan Goddess Life.