Solid Black 5.

そこを音楽に例えるなら何と言えば良いだろう
荘厳な交響曲、それとも雄大な行進曲か
煌くダイアモンドの如く、輝く建物には
誰が暮らしているのだろうか。
そこには豊かな森もあって、何処からか吹いてくる
風にそよぐ木々から、森林独特の豊かな香りがする。
青いサファイアのような小川を横切り、長い坂道を
歩いて行くと広場に出る。


天上界のある場所へ...


かつてベルダンディー達が、学び、遊びそして
幼い時代を過ごして来た思い出の場所であった。
「久しぶりねぇ」
ウルドは目を細めてあたりの景色を眺めた。
「そうね 姉さん」
ベルダンディーはウルドの後を歩きながら
幼い頃を想い出していた。


天上界からの知らせで、急遽戻って来た二人は
関係各位からの伝達事項とか、諸々の手続きが終わり
時間を取ってこちらに赴いたという訳だ。
「まさかあんたがホントに…ねぇ」
「姉さん・・・」
「あ、別に反対してる訳じゃないって」
むしろ応援するわよ、と言葉を続ける。


地上界に降臨した女神が、人間と恋に落ちて
やがて愛し合うようになり、そしてひとつの命を…
しかしまさか女神が妊娠し、十月十日身篭ってと言う
訳ではない。人間界と違っているのは、そのシステム
にあって、天上界の住人たちのそれは、異世界なり
亜空間なりに、自分たちの空間、言うなれば世界を
構築し、そこがいわゆる子宮としての器官となるのだ。
そこに命を宿すと言う事は、各人がそれぞれの光を分光
して、合意した結果、そうなる。
しかしそれは、天上界の住人達だけの儀式だったとも
言えるので、ベルダンディーと螢一の場合は少し特殊
なのだ。
それが今回の異世界人同士の事となれば格別だ。
従来なら、異変があっても、それは想定内の出来事として
処理され、事無きを得るのだが…


「まぁ そこが問題点よねぇ」
「姉さん・・・」
「しかし、それにしてもすごいのはあんた達だわ」
「え?」
「だって、こんな事は有史以前から無かったじゃない」
「それは…そうですが」
「この先、何があるか分からないけど、大丈夫よっ」
そう言ってウルドはベルダンディーの肩に手をやり
「大丈夫だって、あたし達が付いてるからねっ!」
あたし達…あ、そう言えばスクルドの事を忘れてたわ。
後で連絡してやらないと、ね。




ユグドラシル中央管理センターでは、ベルダンディー達が
構築した世界を捕捉し、補完に成功した。
そこには彼女が分光した光が宿っていた。
「これで問題は解決した、と言う事ですね」
オペレーターがホッとした表情でペイオースに尋ねた。
「まぁ、とにかく…」
でも、どうしてですの?何かが引っかかってしまいますの
モニターから見る、その光に包まれた世界を見詰めて
ペイオースは複雑な表情だった。



Solid Black 5.


by belldan Goddess Life.