Solid Black 10.

季節の変化、それは空を眺めながら感じた。
クッキリとした輪郭の雲と、淡く薄く流れるような
秋の雲が混在する空を見て、そう思った。
汗ばむ陽気も、突然変化する気温も全てが季節の変わり目
なんだと感じた。


ヴェルスパーの機転で、得体の知れない何かから逃れた俺は
取り合えず自室で待機している。外の変化とか、異変は
何も感じられないが、それでも少しの安堵を得た。
「いったい何が起こったんだ?」
そもそも俺には、小さな黒猫としか認知出来なかった。
だが、ヴェルスパーには脅威として映ったのは確かだ。
この事態は、もしかしたら女神達が天上界へ、そしてこの場所から
離れて行ったのが起因しているのだろうか、と俺は思った。
だとすれば、あちらにも何かしらの異変が生じているはずだ。


あの子猫・・・とても怯えていた。しかも俺を探すようにしていた
もしかしたら俺を求めて再び現れたのだろうか。
理由は分からない。だが彼の心に確信と呼べるものが芽生える。
「こいつは俺自身でもある・・・」
寂しさを、悲しみを、そして何よりも愛する者を求める気持ちの
その裏にはとても暗い場所があるのだ。
愛憎は常に表裏一体だと言う事だ。


ヴェルスパーは不思議に思った。この者がどこの世界の住人なのか
それが特定出来ない。もっとも近いのが魔界の者だと感じたが
それも違った。
「じゃあ、コイツは一体何者なんだ?」
対応策は無い…法術で展開したシールドに、少し反応しただけで
成す術も無かった。ただ分かった事は、この者が親愛なる女神
ベルダンディーが選んだ伴侶を標的にしている事だけだ。
ヴェルスパーは螢一を護ろうとするのが精一杯だった。


森里家、母屋だけが暗い何者かに支配されて行く。その影は
時間をかけて範囲を広めて行った。


俺はとても彼女、つまりベルダンディー達の事が気掛かりになり
どうしても天上界に連絡を取りたいと思った。
しかし術は無い・・・思わず俺は自室の襖を開け、ヴェルスパーに
相談しようとした時だった。
「わっ!開けるなっ!」
そこにはヴェルスパーと小さな黒猫が居て、対峙している様があった。
俺にはどうしても子猫としか見えない。だから子猫とじゃれ合ってる
ヴェルスパーは何を感じ、怯えているんだろうと思っている。
その時、それはまるで風のように俺の中に入って来た。



 アイタカッタ...ワタシノ...



同時間、天上界のマップに異変が見つかる。突如広範囲に広がる影が
ユグドラシルを包囲しようとしていた。



Solid Black 10.


by belldan Goddess Life.




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アフタ10月号、やっと拝読♪こちらでもヴェルスパーの活躍?
でもさすがベルちゃん!やっぱりあなたは最高だっ!
欄外親衛隊に掲載された方々、おめでとう!