Solid Black 12.

そこには幾つもの扉があった。
あたりはとても暗かったが、それでも扉の向こうには
光が灯る場所もあった。


もしかしたら俺は眠っていたのだろうか。
これは夢かもしれないと、考えたが自覚は無い。
とにかくこの場所がどこで、そして俺は出口を求めて
さまよう事となる。
黒い子猫が俺の中に飛び込んできたのは覚えているが
その後の記憶が曖昧だ。
俺はひとつの扉を開けてみた。そこには何も無かった。
階段を登り更に上へ行って見た。
そこにも扉が幾つもあって、そのひとつを開けてみた。
声が聞こえる。だが人影は無い。部屋の中に入って
窓を見つけ、外を眺めてみたが、深遠の闇で何も見えない。
その部屋には何も無い事を確認し、外へ出ると扉は消える。
「ここはどこだ?一体何のために?」
更に廊下を歩き、何か無いかと探した。


ふと光が見える。
それは懐かしい、それでいて今まで知っている暖かいものだと
俺は感じた。その光に向かって走り出した。
「きっと出口だ」
しかし走っても走っても、その光は遠ざかって行ってしまう。
すぐ目の前にあるはずなのに...


その廊下には、くたびれたソファが置いてあった。
俺はそこで休むことにした。すぐに睡魔が襲ってきて
そのまま俺は眠ってしまう。


眠りの中で、俺はベルダンディー達と楽しく歓談していた。
テーブルの上には暖かい食べ物や、彼女の淹れた飲み物がある。
そこは本当に穏やかで、優しい気持ちになれる場所であった。
俺は用事があって、そこを離れる事になる。何故だが知らないが。
優しく見送ってくれる女神たちに、俺は「行ってきます」と言った。


また扉が現れて、かまわず俺はそこに入って行く。
そこにはブルネットの髪の女が居て、悲しみに暮れていた。
言葉をかけるにも勇気がいる。俺は知らぬ振りを決めて
そこを通り過ぎようとしたが、女に止められる。
「どこへ行くの?私を捨てて?」
泣き顔の女に訴えられてしまった俺は
「君は誰だい?俺には行く所があるんだ」と言った。そして
「君は確か、某国の皇女さまだよね?」
どうして俺が知っているんだ?と自身で訝ったが、考えても
答えなんぞ出てこない。
「さよなら」俺は、彼女の前を通り過ぎた。そしてその後
振り返って見たら、そこには誰もいない。


また扉が現れた。そこを開けると海の匂いがした。
海風に晒されてしまった舟が一艘あった。
帆はボロボロで、まったく手入れはしてない様子だ。
「海は苦手だ 泳げなくはないが・・・」
扉を閉めようとしたが、どうしてだか上手く行かない
そのとき風が、それは強烈な風が吹き上げて来た。


気がつけば俺は、小船に乗っていた。



Solid Black 12.


by belldan Goddess Life.